研究課題/領域番号 |
16K10238
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
賀古 勇輝 北海道大学, 大学病院, 講師 (70374444)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 双極性障害 / 認知行動療法 / 認知リハビリテーション / 集団認知行動療法 / 認知機能障害 |
研究実績の概要 |
平成28年度に立ち上げた多職種チームによる集団認知行動療法を継続し、同様に認知矯正療法士を含む多職種チームで認知リハビリテーション(NEAR: Neuropsychological educational approach to cognitive remediation)も継続した。 この2つのプログラムを組み合わせた気分障害回復活性化統合プログラムを平成30年度は2クール、計11名の患者に実施し、プログラム開始前後での評価を行い、データを集積した。プログラム開始前後での評価は全症例で実施でき、各種評価尺度や質問紙のほか、認知機能検査も実施した。平成29年度にプログラムを実施した9症例に対しては1年後評価として同様に各種評価尺度や質問紙、認知機能検査を実施した。 またチームメンバーの集団認知行動療法や認知リハビリテーションのスキルを維持するために集団認知行動療法研究会や認知機能リハビリテーション講習会などへ参加した。 プログラム前後の評価尺度を解析した結果、抑うつ症状や全般的機能、自動思考、QOLなど多くの領域で有意な改善を認めた。一方、スキーマの尺度は有意な改善は認めなかった。性別や年齢、罹病期間、IQ、診断は効果を予測しなかったが、開始時の認知機能検査を一部がプログラムの効果を予測し、特に言語記憶検査が主観的抑うつや自動思考、全般的機能の改善と相関ししていた。このように予測因子を同定した先行研究はなく、この結果は第9回集団認知行動療法研究会学術総会で発表した。 また、副次的な解析であるが、プログラム前後での評価した尺度のデータを用い、双極性障害患者の主観的認知機能障害を測定するCOBRA(the Cognitive Complaints in Bipolar Disorder Rating Assessment)とQOLとの関連を明らかにし、論文化して発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度では11名の患者をリクルートできたが、予定の3クールは実施できず、2クールにとどまった。プログラムの適応となる候補者はいるものの、病状の悪化や患者の社会復帰のタイミングとの時期のずれなどのためにプログラムに適切なタイミングで参加できないケースが多く、症例数が伸び悩んだ。 プログラムの運営自体は安定してきており、院内外への周知もされてきており、今後症例数を増やすためにより効果的なアナウンス方法を検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は気分障害回復活性化統合プログラムをできるだけ早い時期に3クール実施し、少なくとも12名の双極性障害患者をリクルートする。プログラム前後で評価、データ集積も確実に実施していく。プログラム終了患者の追跡も継続し、1年後評価も随時行っていく。 症例を増やすために、適応となる可能性のある患者を抽出した上で効果的にアナウンスし、院外の関連施設に対する周知も繰り返していく。 集積されたデータは随時中間解析を行い、集団認知行動療法研究会などで発表し、年度の後半で論文投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象患者の蓄積が予定よりも遅れたため、最終的な研究結果の発表や論文化が平成31年度にずれ込んだ。英文論文化する際の翻訳・校閲料や学会発表のための参加費や旅費のため平成31年度に使用額が生じることとなった。
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