研究課題/領域番号 |
16K10239
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
斉藤 まなぶ 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (40568846)
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研究分担者 |
足立 匡基 弘前大学, 医学研究科, 特任助教 (50637329)
中村 和彦 弘前大学, 医学研究科, 教授 (80263911)
大里 絢子 弘前大学, 医学研究科, 助教 (80597162)
栗林 理人 弘前大学, 医学研究科, 特任准教授 (80261436)
高橋 芳雄 弘前大学, 医学研究科, 特任講師 (70760891)
吉田 恵心 弘前大学, 医学研究科, 特任助手 (50752185)
安田 小響 弘前大学, 医学研究科, 特任助手 (50743465)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 脳・神経 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
発達障害の有病率及び併存率の推定:平成26年4月から平成28年10月までに健診に参加した全5才児3804名(月齢平均:63カ月)を解析の対象とした。一次スクリーニングは2923名(76.8%)から回答を得た。二次検診の対象児は607名(20.8%)であった。最終的に希望者31名を含む440名が二次健診に参加した。ASDの診断については、さらに補助診断検査としてASD診断を受けた対象者に後日ADI-RまたはADOSを施行した。その結果、自閉症スペクトラム障害(ASD)が3.30%、注意欠如・多動性障害(ADHD)が4.95%、発達性協調運動障害(DCD)が5.54%、知的障害/境界知能(ID/BIF)が3.33%であった。また、ASDではADHD合併が60.0%、DCDの合併が61.1%、ID/BIFの合併が40.0%であった。 疫学調査における使用尺度の妥当性の検討:AD/HD-RSの内的整合性(N Takayanagi, et al. 2016)、ASSQ短縮版の5歳児適用における妥当性(足立ら、2016)を検証した。 リスク因子の検討:得られた疫学データからロジスティック回帰分析を行い、ASDのリスク因子は出生体重2500g未満と父親の高齢が有意な結果となった。 バイオマーカーの検討:ASD群でIGF-1、VLDL-Cho、VLDL-TGに有意な性差があった。バイオマーカーとASD、ADHD症状との関連性はIGF-1が実行機能の問題、VLDL-Choが相互的対人関係の問題、VLDL-TGが社会性、想像力、対人関係の問題と負の相関があったGazefinderを用いた注視点検査では、5歳のASD児は興味のある映像への注視は長く、興味のない映像への注視は短いことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発達障害の有病率及び併存率の推定:5歳児発達健診は地域に定着しつつあり、健診参加者は年間85%を超えており、研究は順調に遂行している。 疫学調査における使用尺度の妥当性の検討:各尺度の地域性、年齢を考慮した妥当性の検討について総説も含め5報論文化している。未着手のものについて次年度に解析を行う。 バイオマーカーの検討:検出力の関係でサンプル数を要するため、さらにサンプルを増やし解析を進めていく。性差が結果に大きく影響を与えるため、男女に分けて解析を進めていくこととする。
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今後の研究の推進方策 |
発達障害の有病率及び併存率の推定:引き続き健診の実施を行うとともに、若年化での実施を念頭に置いてスクリーニングツールを検討する。 尺度の妥当性の検討、発達検査の短縮版作成:DCDQ-Jについて5歳における妥当性を検討する。また二次健診で用いたDOSCO半構造化面接ASDアルゴリズムについて、作者の同意を得たのち、5歳における信頼性と妥当性を検証したのち、短縮版を作成する。それぞれの検査において、信頼性分析、クロス集計、相関分析、重回帰分析、ロジスティック回帰分析を用いて頻度、診断予測の妥当性を検討する。作成した短縮版を健診で施行したのち、信頼性、妥当性について同様の手法で評価する。 バイオマーカーの検討:バイオマーカーを含めた信頼性の高い診断ツールの開発を行う。 フォローアップ研究:附属病院発達外来において健診で診断された発達障害児を1年ごとに、不安、抑うつ、社会機能、適応能力についてプロスペクティブに観察、評価する。用いる尺度は健診で施行した発達スクリーニングに加え、世界的によく使われている標準化された適応行動の評価尺度Vineland-IIを用いる。介入プログラムには重複障害に対する包括的支援の他、言語、運動、多動衝動などの行動特性に沿った児童支援プログラムと保護者へのペアレントプログラムがあり、効果について施行の前後、さらに1年毎の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
発達障害児のフォローアップ研究として、Early Start Denver Model (ESDM)という療育モデルを導入するにあたり、その療育モデルを学ぶ必要がある。それを活用した診療を行うための治療者養成研修会が年1回開催されるが、スケジュール調整が難しく、参加を見送ったため使用予定額を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年4月8日~11日に佐賀で開催されるESDMアドバンス研修に参加する。研修費用45万円とと旅費11万5042円の支出を予定している。
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