心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)の施行により、精神障害に基づき重大な他害行為をした者(対象者)は裁判所の審判に基づき精神医療を受けることになった。審判に先立ち医療観察法の医療を受ける必要性を判断するため対象者は鑑定入院されられることになる。しかしこの鑑定入院については、目標設定が曖昧で成果を事後的に検証できないという問題が指摘されていた。 我々は、先行研究によって示された「鑑定入院アウトカム指標」計139 項目について、評価者間信頼性や因子構造、相互排他性等を検証しつつ、項目数の絞り込みや重み付けを行うことで、この指標を実践的なものに精緻化することを目的として本研究を行った。 研究協力施設において研究期間内に医療観察法により鑑定入院した患者計20名について、インフォームドコンセントを得て、患者本人・家族・主治医・鑑定医・担当看護師2名・鑑定入院医療機関の多職種チーム構成員・社会復帰調整官・付添人・指定医療機関による各アウトカム指標への回答及び主観的満足度の評点を求めた。また患者に対しては、エッセン精神科病棟風土評価スキーマ日本語版の評点を求めた。さらに139項目の鑑定入院アウトカム指標の可用性に関するアンケートを実施し、計45名から回答を得た。その他関連領域での研究を進めた。 結果として、患者・家族による評価、多職種による協働と役割分担、共通評価項目の活用、対象者に対する看護計画やソーシャルワーク等がアウトカム指標として重要である可能性が示唆された。患者による病棟風土の評価は概ね先行研究のそれと一致していた。鑑定入院に対する主観的満足度については職種による差は乏しかった。 この結果を踏まえ、今後は対象者の医療観察法による医療を実践する立場である指定医療機関から見た鑑定入院アウトカム指標についても精査を進めることとしたい。
|