研究課題
本研究は、「致死性の低い故意の自傷」も自殺の危険因子であるという考えに基づき、自殺関連行動により救命救急センターに搬送される症例のなかから、致死性の低い手段である致死量に至らない過量服薬による救急搬送症例を対象として、その受診状況の実態を詳細に検討し、患者背景の解析および病状評価に基づいて非致死性自殺関連行動に関与する因子群を統計学的に解析することが目的である。さらに、その後の前方視調査を施行することにより自殺関連行動の反復や自殺既遂の予測因子を同定する。これによって得られた結果を活用することにより、最終的には自殺関連行動の再発防止および深刻な救急医療の負担軽減を図ることを本研究の目標としている。現在の救命救急センターにおける精神科医診療体制としては、曜日別にリエゾン・コンサルテーション当番医を2名配置しており(精神保健指定医と研修医)、原則として彼らが患者の状態像の把握と処遇の決定を行うこととしている。また、精神科リエゾンチームによる毎朝の救命救急センターの回診、及び週1回のカンファランスにてその妥当性について検証を行っている。本学における倫理審査委員会において本研究が承認されたのが平成28年9月であり、さらに同年12月に研究実施計画に若干の改定を行ったため、平成28年度中の対象患者数は13で、研究の同意を得ることができたのが4、過量服薬以外の比較対象とする患者数は11となっていた。その後着実に患者数は増え、全体でそれぞれ、同意が得られた対象患者数は43件、比較対象とする患者数は68件となった。現在得られたデータの解析を行っている。