研究課題/領域番号 |
16K10247
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉村 優子 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 助教 (70597070)
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研究分担者 |
林 則夫 群馬県立県民健康科学大学, 診療放射線学部, 准教授 (50648459)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 脳磁計(MEG) / 言語発達 / 聴覚情報処理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、0~5歳の自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder, ASD)児(疑いのある児を含む)と健常児を対象に、物の音や人の声によって引き起こされる大脳皮質の反応の違いを幼児用脳磁計(Magnetoencephalography, MEG)により捉え、聴覚機構の鼓膜から中耳、内耳を対象とした耳鼻咽喉科学的な聴覚検査を加えることにより、聴覚情報処理過程の末梢から中枢処理を解析し、ASD 乳幼児の言語発達および聴覚過敏の有無との関係を調べることである。また、得られた生理学的データと発達検査や質問紙による行動学的評価の関係が、ASD の診断の早期診断の指標になりうるかどうかについて検討する。H28年度の成果としては、25名の1歳から7歳の定型発達児と5歳から7歳の20名の自閉スペクトラム症児を対象に音によって引き起こされる大脳皮質の反応を小児用脳磁計を用いて測定した。さらに、聴覚情報処理の末梢から中枢の機能を調べるため、耳鼻咽喉科学的な検査(ティンパノメトリ、アブミ骨筋反射、DPOAE、ABR、純音聴力検査、不快閾値)を実施した。全参加者に対して認知機能検査及び言語機能検査、質問紙を用いた社会性、過敏症状についての評価実施し、自閉スペクトラム症児および疑いの児に対しては、自閉症診断尺度を用いた評価を実施した。H29年度も引き続き、参加者を増やして解析を行う予定であるが、H28年度に測定したデータについて、現在脳反応や認知機能との関係について解析中を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象として、定型発達児 30名、 ASD およびその疑いのある児 30 名を公募する予定であるが、研究参加者のリクルートが順調であり、末梢系、中枢系聴覚情報処理についてのデータ取得が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度も引き続き、参加者を公募し、臨床的な認知行動学的データ及び生理学的データの相関評価統計的な解析を行っていく。参加者に対し、ASDの診断と症状評価、認知機能、言語能力、コミュニケーション・社会性の行動学的評価、MEGによる脳活動の計測及び末梢系の聴力検査による聴覚情報処理過程の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度に本研究に参加した定型発達児および自閉スペクトラム症児は、センターオブイノベーション(COI)プロジェクトにおいて、研究代表者が取り組む、本研究とは別の実験にも参加しており、本助成金から謝金を支払う必要がなかった。また、前年度までの科研費において研究代表者が購入したパソコンなどが、本研究でも使用できることが分かったため、本研究を実施する上で新たに購入するものの物品費を抑えることができた。H28年度は、参加者のリクルート、実験の実施、データの取得に多くの時間を費やしたことから、研究の内容や成果について発表するために出張などが出来ず、旅費も抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験装置、ソフトウェア、消耗品などについては、H29年度以降、現在使用しているものを交換、追加購入する必要があるため、購入に当てる。実験の参加者を増やすことによって、より多くのデータが得られれば、統計的に有意義な検定が可能になるだけでなく、自閉スペクトラム症のサブタイプの分類や、年齢ごとの解析など解析の幅が広がり、より研究を発展させることができる。そのため、謝金はH29年度に繰り越して、参加者をさらに増やしていく。H29年度から、本研究で得られた研究の成果や結果について、国内や海外の学会で発表するため、旅費として使用する。得られた成果を論文化する際に必要な英文校正、出版費なども要する。
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