研究実績の概要 |
本研究では強迫性障害(OCD)の患者とその第一度近親者を対象とし、脳画像解析と神経心理機能検査(Wisconsin Card Sorting Test, Stop Signal Task, Stroop Test, Iowa Gambling Task)を用いて、エンドフェノタイプ(中間表現型)を同定することで、OCDの客観的な指標を用いた生物学的異種性を明らかにすることが目的であった。 研究期間内に治療薬未内服OCD患者41名、その第一度近親者15名、健常コントロール群52名の撮像と各種の神経心理機能検査を終えたが、第一度近親者については研究期間内に当初予定の30名をリクルートすることができず、本研究の当初の目的は完遂できなかった。 しかし、統計学的に十分な人数がリクルートできたOCD群と健常コントロール群の二群比較を行い、OCD群は背側尾状核と前島部を含むいくつかの脳領域との機能的結合の増大が認知的柔軟性の低下と関連していること、健常群では背側尾状核と前島部との機能的結合の低下が認知的柔軟性の低下と関連していることを導き出し、海外の学会にて報告した。現在結果を海外の専門雑誌に投稿し査読中である。 また、対象者が少ないという限界はあったが、OCDの第一度親族でOCDを発症していない者13名と年齢、性別、IQを一致させた健常者13名を対象として、Wisconsin Card Sorting Test(WCST), Stop Signal Task, Stroop Test, Iowa Gambling Taskによる神経心理機能について群間比較を行い、WCSTにおいて統計学的有意差を認め、親族群において認知的非柔軟性が存在する可能性が示唆されたことを報告した。
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