研究課題/領域番号 |
16K10254
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
岸田 郁子 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (60464533)
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研究分担者 |
藤林 真美 摂南大学, 学生部スポーツ振興センター, 准教授 (40599396)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リワークプログラム / 自律神経活動動態 |
研究実績の概要 |
近年、長期休職中の気分障害患者が急増しており、復職支援デイケア(リワークプログラム)の社会的な要請が高まる中、プログラムの効果や、復職成功予測因子についての科学的な探索は十分ではない。本研究は、リワークプログラム通所中の気分障害患者を対象に、非観血的に自律神経機能を測定し、健常者との比較、リワークプログラムが自律神経活動及び精神症状に及ぼす効果を検討した。 H29年度は、H28年度よりさらに対象者を増やし、リワークプログラムに通所中の気分障害または適応障害の患者122名(男性92名, 女性30名)を対象とした。リワークプログラム開始時と修了時、MADRAS-Jを用いて精神症状を評価し比較したところ、抑うつ症状の有意な改善を認めた(p<0.01)。また、リワークプログラム開始時と修了時に、安静時心電図を測定後、 心拍変動パワースペクトル分析により自律神経活動を定量化した。リワークプログラム開始時の患者群の自律神経活動の平均値は,健常者と比較し,交感神経活動が有意に高かった(p=0.03)。また、リワークプログラム前後の比較では、副交感神経活動が,リワーク後に高い傾向が見られたが, 有意差は認められなかった(p=0.078)。 本結果から、リワークプログラムに参加した患者は、健常者と比較し、リワークプログラム開始時に、交感神経活動が有意に高いことが示唆された。また、リワークプログラムに3カ月通所した患者では、副交感神経活動が改善する傾向がみられ、リワークプログラムが、精神症状だけでなく、自律神経活動の改善に有効であることが示唆された。しかし、個々の自律神経活動は個体差が大きい結果であったため、今後はさらに症例を重ねて検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、リワークプログラムを実施し、参加した患者群の精神医学的診断、精神医学的評価等のデータ収集、心拍変動パワースペクトル解析による自律神活動データの収集中である。現在までに、100例を超える患者を対象に、データの収集を終えている。リワークプログラムに参加する患者群の精神医学的臨床データと測定された自律神経機能を解析し、患者群の特徴を解析している。これらの研究成果を、国内学会に発表する予定である。 今後は、症例収集を継続し、臨床データと、自律神経活動との相関やプログラム前後でのより詳細な解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
気分障害患者の症状は、元来の性格傾向や向精神薬の影響、休養に伴う活動性低下など多岐にわたる因子に影響される。本研究では、リワークプログラムに参加する精神疾患患者を対象に自律神経活動を測定し、精神医学的臨床データ、身体状況や日常活動量などを含めて包括的に解析し、リワークプログラムの有効性の評価や復職継続性に関わる因子の解明を目的としている。 今後はさらに、疾患重症度、性格傾向や社会適応性、活動量などの生活歴、使用中の向精神薬などの精神医学的臨床データを収集する予定である。さらに、バイオマーカーとして自律神経活動動態との相関を解析していく。 これらの結果を順次国内外の国内・国際学会に発表する。さらに、研究成果を学術誌投稿論文で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、リワークプログラムの開催、精神医学的なデータ収集の進捗状況はおおむね順調に行われている。一方で、より詳細な心理学的な評価やバイオマーカーの解析はいまだなされておらず、今年度は、それらにかかわる人件費や消耗品の費用が支出されていない。
次年度の研究計画として、さらに、データ収集を継続し、症例数を増やすとともに、リワークプログラム介入前後での疾患重症度、性格傾向や社会適応性などの心理学的な評価、バイオマーカー解析による生物学的な解析をすすめ、リワークプログラムの有効性の評価や復職継続性に関わる因子を科学的に解明していく予定である。
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