研究課題/領域番号 |
16K10254
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
岸田 郁子 横浜市立大学, 医学研究科, 客員講師 (60464533)
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研究分担者 |
藤林 真美 摂南大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40599396)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リワークプログラム / 自律神経活動動態 / 心拍変動パワースペクトル解析 |
研究実績の概要 |
近年、長期休職中の気分障害患者が急増しており、復職支援デイケア(リワークプログラム)の社会的な要請が高まる中、プログラムの効果や、復職成功予測因子についての科学的な探索は十分ではない。本研究は、リワークプログラム通所中の気分障害患者を対象に、非観血的に自律神経機能を測定し、リワークプログラムが自律神経活動及び精神症状に及ぼす効果を検討した。 本研究では、H29年度まで、気分障害または適応障害の患者を対象として、リワークプログラムによる精神症状と自律神経機能の評価を行ってきたが、H30年度は、リワークプログラム参加者の中核群である気分障害患者104名に対象者を限定して、より詳細な解析を行った。リワークプログラム開始時と修了時に、MADRAS-J、SASSを用いて精神症状を評価し比較したところ、抑うつ症状、社会適応度ともに有意な改善を認めた(p<0.001)。また、リワークプログラム開始時と修了時に、安静時心電図を測定後、心拍変動パワースペクトル分析により自律神経活動を定量化したところ、副交感神経活動が,リワーク後に有意に改善した(p=0.014)。また、15名を対象に運動療法プログラムを施行し、STAIによる評価を行ったところ、状態不安項目が有意に改善した。 本結果から、リワークプログラムに3カ月通所した患者では、精神症状および自律神経活動の改善に有効であることが示唆された。しかし、個々の自律神経活動は個体差が大きい結果であったため、今後はさらに症例を重ねて検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、リワークプログラムを実施し、参加した患者群の精神医学的診断、精神医学的評価等のデータ収集、心拍変動パワースペクトル解析による自律神活動データを収集している。現在までに、100例を超える患者を対象に、データの収集を終えている。リワークプログラムに参加する患者群の精神医学的臨床データと測定された自律神経機能を解析し、患者群の特徴を解析している。H29年度は、これらの研究成果を国内学会で発表し、さらに国際誌へ投稿中である。今後は、症例収集を継続し、臨床データと、自律神経活動との相関やプログラム前後でのより詳細な解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、リワークプログラムに参加する精神疾患患者を対象に自律神経活動を測定し、精神医学的臨床データ、身体状況や日常活動量などを含めて包括的に解析し、リワークプログラムの有効性を評価してきた。今後はさらに、社会適応性や使用中の向精神薬などの精神医学的臨床データを収集し、復職の可否や復職継続性に関わる因子を解明すべく、詳細な解析を行う予定である。さらに、バイオマーカーとして自律神経活動動態との相関を解析していく。 また、本研究では自律神経活動測定に、周波数解析を用いた心拍変動パワースペクトル解析を行ったが、対象者間の個体差が大きく、復職予測因子を推測することが困難であった。そのため、時間領域解析で自律神経のトーン、周波数解析で成分を分析することとし、あわせて、静止時だけでなく、起立時の測定結果も組み合わせ、より詳細な自律神経活動動態の解析を行うこととした。可能な限り症例数を増やすとともに、複数の自律神経活動評価による生物学的な解析をすすめ、リワークプログラムの有効性の評価や復職継続性に関わる因子を科学的に解明していく予定である。 これらの結果を順次国内外の国内・国際学会に発表する。さらに、研究成果を学術誌投稿論文で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、リワークプログラムの開催、精神医学的なデータ収集の進捗状況はおおむね順調に行われている。 一方で、より詳細なバイオマーカーの解析はいまだなされていない。そこで、自律神経活動動態の解析には、時間領域解析で自律神経のトーン、周波数解析で成分を分析することとし、あわせて、静止時だけでなく、起立時の測定結果も組み合わせる計画とした。 そのため、事業期間を延長し、次年度の研究計画として、さらに、データ収集を継続し、症例数を増やすとともに、リワークプログラム介入前後での疾患重症度、社会適応性などの心理学的な評価、複数の自律神経活動評価による生物学的な解析をすすめることとした。そのため、消耗品費、人件費がさらに必要である。また、研究成果を学会で報告するための旅費も使用予定である。
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