研究課題/領域番号 |
16K10255
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
藤田 純一 横浜市立大学, 附属病院, 講師 (00533861)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 幻聴体験 / 幻視体験 / 自殺念慮 |
研究実績の概要 |
「目的」近年精神病症状、特に幻聴体験は抑うつや不安、自殺念慮などの精神不調との関連が示唆されており注目されている。一般的には幻聴体験を訴える若年者は幻聴体験だけでなく、妄想や幻視など複数の精神病体験を持ち合わせている。幻聴体験に併存する幻視体験について、精神不調との影響はこれまで十分に明らかにされておらず、詳細を検討する必要がある。[実施内容]横浜市立大学附属病院、横浜市立大学附属市民総合医療センター、神奈川県立こども医療センターの3病院を対象として初診時横断調査を実施した。期間は2015年4月~2017年3月の3年間である。10~15歳の初診患者に対して抑うつ症状の評価としてPHQ⁻9が実施され、同時に幻聴体験と幻視体験の有無が評価された。初診時にこれらの評価に協力を得ることができたもの、精神遅滞を併存しないもの、何らかの精神科的診断がついたものが対象となり、1309名の初診患者のうち802名のデータが解析された。結果として、重度の抑うつ症状(PHQ-9で15点以上)を併存している患者はそうでない患者と比べて、幻聴体験の併存が有意に多かった(37% vs 9%、p<0.05)。また幻視体験も同様に併存が有意に多かった(31% vs 9%、p<0.05)。重度の抑うつ症状を併存していた159名のうち、幻視体験は自殺念慮に関連していたが、幻聴体験は関連していなかった。結果からは幻聴体験だけでなく、幻視体験も重要な精神不調の指標であり、自殺予防の観点からは幻視体験についても臨床家は着目する必要がある事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)初診時患者の横断調査 3年間のデータの蓄積を完了し、分析、論文発表準備にまでこぎつけている。1)に関しては順調な進捗と考えている。 2)自殺企図者の6か月縦断調査 当初の計画では年間30名以上の対象者から同意が取得できることを予定していたが、平成29年6月からデータ収集を開始して、現時点ではその半数にとどまっている。また脱落者も多くみられており、2)に関しては研究計画の延長が必要と考えている。 3)抑うつ状態を呈する精神不調を呈した患者の精神病体験と遺伝子多型の関係に関する研究 倫理申請に時間がかかり、平成29年9月よりデータ収集を開始できた。目標症例数100例で約6か月経過した時点での登録症例が20症例程度である。今後も継続的にデータを蓄積していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)初診時患者の横断調査 平成30年7月にプラハでの国際児童青年精神医学会で結果を発表し、その後論文化を予定している。 2)自殺企図者の6か月縦断調査 引き続き、recruitの方法を検討しながら症例を蓄積していく予定である。 3)抑うつ状態を呈する精神不調を呈した患者の精神病体験と遺伝子多型の関係に関する研究 研究対象者を当初10~15歳としていたが、平成30年2月に対象年齢を広げて10~18歳とした。対象者の増加が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に学会発表や論文発表を行い、そのための旅費、参加費に使用する予定。 また、遺伝子検査の検査試薬も購入する予定。
平成29年度の予算内で必要だった試薬が購入できなかったため、次年度に回してまとめて購入する予定とした。
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