研究課題
感覚過敏は種々の疾患で見られる症状であり、本研究では昨年に引き続きその生理学的評価方法について更に検討を加えた。聴覚刺激の連発刺激による抑制作用は変化関連反応と組み合わせ、これまでの方法よりも効率的に調べることが可能となった。重要な所見として、①テスト刺激とコンディション刺激の間隔は500-600msが最大となり、それよりも短くても、長くてもテスト刺激に対する反応の抑制率が低下すること、②コンディション刺激の変化させる音圧を小さくするとテスト刺激の反応抑制率は低下すること、③脳磁図でも脳波でも同様のパラダイムを使用することで明瞭に抑制現象を観察することができること、などが分かった。更に、触覚でも変化関連反応を連発することで聴覚と同じ抑制を見ることができ、新たな生理学的手法として期待できる。そのメカニズムの詳細については検討を続けている。このようなペアードパルスによる方法、また物理的変化量を徐々に増大させた時に見られる反応率の勾配とその抑制、プレパルスインヒビション、連続刺激による反応の低下(Habituation)などが大脳皮質における感覚情報抑制に関連する指標となりうる。今後、これが適切かつ臨床的に使用可能であるかについて触覚、侵害受容感覚などについても調べる予定である。しかし、残念ながらこのような感覚過敏などの指標と実臨床を結びつけるためにはまだそのハードルは高い。このためその脳内メカニズムを別の視点から検討する必要性が出てきており、動物(高社会性げっ歯類)を用いた感覚刺激実験、行動薬理学的実験を追加することも検討している。
3: やや遅れている
様々なパラダイムを用いて、効率的な感覚抑制機構を調べている。これまで中心としてきた聴覚から、触覚にも広げて検討は進んでいる。しかし、臨床応用するには未だ患者の負担が大きいこともあり、困難になっている。痛覚刺激も同様である。
研究を進める中で、感覚過敏性の背景にある機能障害やその幅広い影響を多方面から詳細に検討する必要が出てきている。このためにはヒトを対象とした生理学的実験では不十分になりつつあり、動物実験が必要であると考えている。研究代表者は高社会性げっ歯類であるハタネズミを用いた研究をすでに行っているが、感覚過敏性と社会関係を調べるために極めて魅力的なテーマである。これにより臨床的にも有用な情報を得られる可能性が極めて高い。今後はその研究も加えて行いたい。
購入を予定していた刺激装置は現在所有している機器で代替が可能であることが分かり、購入は延期した。次年度はハタネズミの感覚障害(特に神経障害性疼痛をモデルとする)の行動実験を行うために予算の一部を使用する予定としている。また別途、旅費としても使用する
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
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