研究実績の概要 |
てんかん患者の社会参加を促進する上で認知機能障害・高次脳機能障害を適切に評価することは重要課題である。てんかん患者における主観的な無能力感、生活上の困難さや社会適応上の問題がMMSE,WAIS-Ⅲ,WMS-Rなどの標準的に行われている知能検査では十分に評価しきれていないことは臨床的にしばしば遭遇する事実であり、本研究の目的は従来の高次脳機能検査の概念を超えた心理検査・精神医学的検査を多面的に組み合わせた心理バッテリーからてんかん患者の実生活上困難となる社会認知的問題を定性的・定量的に具体性をもって測定する方法を開発することにある。 外来を受診したてんかん患者のうち同意を得られた患者42名から得られたデータをもとに①主観的なQOL②心理・精神状態③表現④理解⑤正当な評価と過大な評価に関するスケールとAQ,CAARS指標(A(注意不足/記憶の問題), B(多動性/落ち着きのなさ) , C(衝動性/情緒不安定) , D(自己概念の問題)) ,BDI-II,およびWAIS-III(FSIQ,VIQ,PIQ, 言語理解, 知覚統合, 作動記憶, 処理速度)の関係性を検証した。例えば主観的な「QOL」の問題はAQ,CAARS, BDI-IIの相関においてはAQ, CAARS指標と負の相関を示し、主観的な「心理・精神状態」の問題とAQ,CAARS, BDI-IIの相関においてはCAARS指標DやBDI-Iと負の相関を示した。このようにてんかん患者の主観的に感じるQOLや能力に関する評価は客観的な知的・高次脳機能障害に比べて気分の問題、注意・コミュニケーションの問題とより相関するように思われた。
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