研究実績の概要 |
平成28年度の研究の目的は、最新の心臓PET/CT装置を用いて冠血流予備能を測定するための撮影プロトコールおよび解析プログラムを開発することである。24名の冠動脈疾患患者と年齢があった8例の健常ボランティアを対象とした。PET/CT装置にて、500MBqの15-酸素標識水を投与し、安静時とATP負荷時の心筋血流量を測定した。その比から冠血流予備能を算出した。結果は、対象者全員で冠血流予備能を測定することが可能であった。健常者にて冠動脈領域毎に局所冠血流予備能を測定したところ、安静時でのばらつきが少なく、正確に測定できていると考えられた(左前下行枝: 0.82 ± 0.15 ml/min/g、左回旋枝: 0.83 ± 0.17 ml/min/g、右冠動脈: 0.71 ± 0.20 ml/min/g、p = 0.74)。ATP負荷時でも同様であった(左前下行枝: 3.77 ± 1.00 ml/min/g、左回旋枝: 3.56 ± 1.01 ml/min/g、右冠動脈: 3.27 ± 1.04 ml/min/g, p = 0.62)。結果として、冠血流予備能も正確に算出された(左前下行枝: 4.64 ± 0.90、左回旋枝: 4.30 ± 0.64、右冠動脈: 4.64 ± 0.96, p = 0.66)。患者と比較したところ、患者の冠血流予備能は、健常ボランティアと比較して有意に低下したことから(2.75 ± 0.81 vs. 4.54 ± 0.66, p = 0.0002)、冠血流予備能を用いることによって、冠動脈疾患患者を検出することができることが示された。さらに患者での局所解析にて、50%以上の狭窄病変のある領域では狭窄のない領域に比べて冠血流予備能が低下する傾向があった(2.43 ± 0.81 vs. 2.95 ± 0.92, p = 0.052)。現在、欧米雑誌に論文投稿中である。
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