研究課題/領域番号 |
16K10269
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
勝又 奈津美 群馬大学, 医学部附属病院, 医員 (50588811)
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研究分担者 |
花岡 宏史 群馬大学, 大学院医学系研究科, 特任准教授 (50361390)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | RI内用療法 / トリプルネガティブ乳癌 / 抗VEGF抗体 |
研究実績の概要 |
乳癌の治療において適切な薬物療法を行うことは重要であるが、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)に対する有効な分子標的薬剤は存在しておらず、その開発が強く望まれている。一方、治療用の放射性核種(RI)を結合した分子標的薬剤を用いた「分子標的RI内用療法」は、新たな分子標的治療薬として注目され、既に臨床利用されている。そこで本研究ではTNBCに対する新たな分子標的治療薬として、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対する抗体に治療用のRIを結合したRI標識抗体による治療を試みた。 診断用のインジウム-111(In-111)標識ベバシズマブを用いて、担がんマウスにおける体内分布実験を行ったところ、In-111標識ベバシズマブは血液クリアランスが非常に遅いため、血中のRIによる血液毒性が懸念された。そこで、血中の放射能を低減させる目的で、RI標識抗体にビオチンを結合させ、投与24時間後にアビジン投与を行った。投与されたアビジンは即座にビオチン化抗体に結合し、その後速やかに肝臓へと移行することが期待された。その結果、予想通りRI標識抗体の血中放射活性は有意に低減し、その一方で腫瘍での放射活性は保持されていた。そこで治療用RIであるイットリウム-90(Y-90)で標識抗体を用いた治療実験を試みた。アビジン投与を併用することで、マウスに対して投与可能な放射能を2倍にすることが可能となり、その結果として腫瘍増殖抑制効果を増強することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TNBCにRIを輸送するための分子として、抗VEGF抗体ベバシズマブを選択し、担がんマウスにおける体内動態の検討を行ったところRI標識ベバシズマブの血中滞留性が認められた。そこで抗体をビオチン化し、アビジンを投与することで血中の放射活性を大きく低減し、血液毒性を低減することに成功した。担がんマウスを用いた検討において、治療用のY-90標識ベバシズマブの投与により、腫瘍増殖抑制効果を示したが、ビオチン-アビジンシステムを利用することで、投与放射能を2倍にすることができ、その分、治療効果を増強することができた。本手法は臨床においても利用可能であると考えられ、Y-90標識ベバシズマブを用いたTNBCの治療の可能性を示すものである。 以上より本研究は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらなる治療効果の向上を目指して、プレターゲティング法等の他の治療戦略についても検討していく予定である。また、ビオチン-アビジンシステム以外の方法で、血中の放射活性を低減可能かどうかについても検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
金額調整を行わず、予算内で収まるように物品を購入したため、少額の残が生じた。 次年度に消耗品費として使用する予定である。
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