研究実績の概要 |
IDH1/IDH2遺伝子変異は肝内胆管癌(ICC)の25%ほどに見られると報告されており、この変異を有するICCの予後が良いことが知られている。治療前のICCにおいて、この遺伝子変異を示す画像的特徴が示されれば、予後予測・治療方針決定に大きなインパクトがあると考えられる。 今回、41例の腫瘤形成型ICCに対して遺伝子解析を行った。これらのうち14例にIDH1/IDH2変異を見いだした。14例中11例に病変のほとんどに細胆管癌様所見が病理学的に確認された。一方、IDH1/IDH2変異を認めない27例においても13例に細胆管癌様所見を認めたが、その割合はIDH1/IDH2変異を伴うものと比べて軽微であった。さらに41例の腫瘤形成型ICC41例の中でMRI検査が行われた14例について、画像解析を行った(IDH1/IDH2変異有群n=5,IDH1/IDH2変異無群n=9)。このうち、IDH1/IDH2変異例では腫瘤中心部の見かけの拡散係数(ADC値)が有意に低い値(1.3±0.3mm2/s vs 1.8±0.3mm2/s, p<0.05)を示した。病理学的にはIDH1/IDH2変異有群では成熟した間質で占められており、一方、IDH1/IDH2変異無群では線維芽細胞を伴った活動性の線維組織がよく見られた。これらのコホートにおける生存期間の検討では、IDH1/IDH2変異有群はIDH1/IDH2変異無群に比べて長い傾向にあったが、症例数が十分でなかったためか、有意差は示すことは出来なかった。 IDH1/IDH2は腫瘍間質の形成に影響を与え、それらがMRI画像(特にADC値)で検出できる可能性が示唆された。
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