今回の研究では陽子線治療後肝細胞癌の画像変化に着目し、その変化と治療効果との関連性を評価し、陽子線治療後肝細胞癌における治療効果の予測や、最適な照射方法を確立することを目的とした。 造影ダイナミックCT画像では、動脈優位相を中心としたCT値の変化(time density curve)を評価し、 造影ダイナミックMRI 画像では、腫瘍の信号強度(SI:signal intensity)の造影後の増強率(造影後SI-造影前SI)/造影前SI)を算出し、血行動態の変化を解析した。 陽子線治療後には、肝細胞癌はCTにてCT値は低下し低濃度となり、MRIではT1Wでは低信号のままだが、T2WIと拡散強調画像では低信号化してくる。陽子線照射を受けた周囲肝実質は限局的な放射線肝炎によりT1WIにて低信号化し、T2WIで淡い高信号を呈するようになる。肝細胞癌の血行動態の変化として、肝細胞癌特有の動脈相での濃染、そして門脈相で造影剤の内部washoutという特徴が変化し、陽子線照射後は動脈相から門脈相、平衡相にかけて徐々に染まりが強くなるようになる。陽子線照射を受けた周囲肝実質は、限局的な放射線肝炎により、動脈相から門脈相、平衡相にかけて徐々に染まりが強くなり、限局的な肝炎変化による肝中心静脈閉塞症の変化や繊維化を反映していると考えられた。陽子線治療後経過で増大を来した再発肝細胞癌の解析では動脈相から門脈相にかけて濃染を認め、平衡相で染まりが停滞状態となるか、やや減少する所見を呈し、通常の肝細胞癌や陽子線治療後肝細胞癌とは異なる血行動態を示した。この血行動態の変化は腫瘍細胞自体の変化に加えて、周囲の限局的な放射線肝炎によって修飾されている可能性は否定できないが、この血行動態の違いが再発肝細胞癌を早期診断に導く、一助となる可能性が示唆された。
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