研究課題
70kVという、従来CTで用いられる120kVと比較してはるかに低エネルギーのX線を用いたCT 動脈撮影(CT angiography: CTA)の撮像により、動脈のコントラストが改善して小径腎癌に対する腎部分切除術、特にロボット支援手術の術前評価に際して有用である事が確認できた昨年度の方針を引き継ぎ、同様の撮像法でさらなる症例の蓄積をはかった。これにより実際に手術に至った症例は200例を越えることができた。CTAによる動脈の描出に加えて、より遅いタイミングでの腎臓実質、尿路、腫瘍のコントラストを高める、Dual energy CT撮像の有用性も、昨年度40keV画像という非常にエネルギーの低い仮想単色X線画像について昨年検討を行ったが、ノイズが多いなどの問題点もあったため、仮想単色X線処理のさらなる最適化を検討すべく、処理可能な40keV~190keVの画像を用いて検討を行った。この結果、ノイズの上昇はあるものの、CNRの観点からも再構成できる最も低エネルギーである40keV画像が望ましいことが分かり、その結果はRadiological society of north America (RSNA) 2018へ演題応募を行った。ZIO株式会社と共同で改良が進められた、低エネルギー撮像によるより高いCT値にも対応した血管自動追尾機能の有用性を検討したが、まだ充分ではないことがわかり、CT機器ベンダーが提供する解析環境である、syngo via Frontier上での解析を試みることとした。
3: やや遅れている
私自身の異動があり神戸大学では非常勤職員・客員教授の立場となったため、画像処理のために神戸大学へ訪問できるのが1回/週となった。予定より進んでいる点:症例蓄積は当初の予定以上に早く進み、外科的手術による腎細胞癌の最終診断の得られた症例のみでも、現時点で200例をこえている。予定より遅れている点:血管自動追尾、およびセグメンテーションに対する、既存ソフトウエアの改良はまだ充分とは言えてない。syngo via Frontier環境による画像処理環境の作成はこれまで経験のないものであるが、アプリケーションの専門家による協力のもと、画像処理環境を作成している。さらに、これまで積極的に進められてきた腎癌部分切除について、最近の報告から局所再発のリスクが高まるおそれのある事が示され、そのリスクファクターとして微小な静脈腫瘍塞栓や腎洞脂肪組織への浸潤の存在が考えられるとの報告があった。部分切除術の普及を助ける画像解析環境の構築を目的とする本検討において、現状の撮像法がこれらのリスクファクタ-の描出にも足ることを確認することは必須であると判断した。そのため急きょ200余例の手術例における腫瘍塞栓の描出能にたいする検討を行った。その結果、当院で施行している70kV低電圧撮像によるCTAとdual-energy CTによる腎実質相の撮像の組み合わせにより、腎洞側の静脈腫瘍塞栓や腫瘍浸潤を良好に検出できることが確認できたため、この検討についてもRadiological society of north America (RSNA) 2018へ演題応募を行った。
私自身の異動があり神戸大学では非常勤職員・客員教授の立場となったため、画像処理のために神戸大学へ訪問できるのが1回/週となった。症例の蓄積自体は、神戸大学での手術例の豊富さから、引き続き予定を上回る速度で症例の蓄積が進んでおり、泌尿器科と協力して、手術時の記録や合併症、術後経過・機能評価などの臨床データの蓄積も進めていく。平成29年度前半中に画像解析ソフトの評価版の完成を目標とした、画像解析ソフト開発環境の活用の遅れは、私の異動にともない遅れており、本開発環境を提供するシーメンス社の研究員との協力をすすめ、解析ソフトの開発を促進する。画像解析ソフト完成時には200例を越える手術例が臨床データとして解析可能な状態となるため、ソフトウエアの完成し次第に豊富な臨床例の検討に早急に入る。また、今回明らかとなった、腎部分切除術の局所再発リスクファクターの検討については、不適切な術式の適応による患者予後の低下をきたさないよう、泌尿器科医との連携をさらに進める予定である。特に部分切除のリスクに対する啓蒙の一環として、今年度には画像医学会においてシンポジウムを企画して、泌尿器科医、病理医、放射線科医にたいして、部分切除術の術前評価の重要性をしめしたが、30年度も、泌尿器画像診断技術研究会(JSURT)において、同様の講演をおこなって啓蒙を進めていく予定としている。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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