ロボット支援手術を前提とした包括的腎がん術前撮影プロトコルを、70kVという低エネルギー撮像法を用いることで確立できた。本手法により、腎実質内の末梢動脈分枝を描出できるCT angiography画像が得られ、腎部分切除をより安全かつ正確に行うことができる画像処理・解析ができるようになった。 昨年度明らかになった、腎部分切除症例における腎洞側における病変の浸潤、とくに腎静脈の細分枝への腫瘍浸潤が、病理学的進達度をT3aへと上方修正させてしまうにも関わらず、これまでの病理学的検討もふくめ多く見過ごされているという問題点を解決すべく、腫瘍の腎洞側への浸潤をより正確に診断しうる検査法の検討を行った。昨年度まで主に用いてきた、静脈が均一に造影されるタイミングで、従来腎静脈腫瘍塞栓の評価の基準であった腎実質相および排泄相の撮影に、Dual energy CTによる低エネルギー仮想単色X線画像(40keV)を応用した場合と、不均一ながら腫瘍塞栓自体の造影効果が明瞭である造影早期の画像との比較を行った。その結果、従来の撮像法より、造影早期画像のほうが、微小な腫瘍塞栓の描出に有用であることがわかり、2019年3月に開催された欧州放射線学会 European Congress of Radiology (ECR) 2019にて口演発表した。さらに、安全に腎部分切除を行うことができるように、腎洞側での画像評価を正確に行う方法に関して、腫瘍の腎洞脂肪織との接し方、接する形状が重要である事を明らかにし、同じくECR 2019にて口演発表を行った。 また、これら重要な画像所見および、撮像技術についての教育的発表として2018年12月に開催された北米放射線学会 Radiological Society of North Americaで発表し、Certificate of Merit賞を受賞した。
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