研究課題
本研究の目的は、胃癌の病理学的多様性に着目し、画像的な評価が可能であるかを検索することであり、胃癌の診断ツールの一つである造影CTで我々独自の表示法であるWall-carving技術を用いて評価を行った。始めに、我々は胃のWall-carvingの正常構造を把握するために、Wall-carving展開像を用いて胃粘膜の内視鏡像との比較を行った。この研究では51例の早期胃癌症例のCT画像に対しWall-carving展開像を作成し、血管像の所見をnetwork(網状)、dendritic(樹枝状)、wavy(波状)の3パターンに分類し、胃粘膜の慢性変化(萎縮、襞腫大、びまん性発赤)、および胃癌の病理結果(肉眼型、組織型、深達度、局在)と比較した。上記血管像の頻度はそれぞれ16%、51%、33%で、dendriticパターンが最多であった。 血管像については、萎縮の程度に伴い血管の蛇行が強くなる傾向を認めた。次に、我々は進行胃癌におけるWall-carving画像についての研究を行った。対象は造影CTを行い病理学的診断が得られた進行胃癌36例を用いた。Wall-carving像動脈相おける胃癌の増強の程度を表層からの深度ごとに評価し、病理学的所見(大きさ、肉眼型、深達度、組織型、間質量、発育様式、脈管侵襲、リンパ節転移)と比較した。結果、表層部は72%が強く増強され、深層は50%が強く増強された。病理学的所見は、深層の強い増強と組織型、間質量が有意な相関を示した。以上のことから、胃癌の造影CTでWall-carving像の深層を評価することで胃癌の病理構築(組織型、間質量)が類推できることが明らかとなった。
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European Journal of Radiology
巻: 108 ページ: 165-171
10.1007/s11604-017-0631-1