研究課題/領域番号 |
16K10288
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
松本 俊郎 大分大学, 医学部, 准教授 (80219500)
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研究分担者 |
森 宣 大分大学, 医学部, 教授 (20128226)
山田 康成 大分大学, 医学部, 講師 (60244183)
清永 麻紀 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (90464445)
高司 亮 大分大学, 医学部, 助教 (90464453)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リンパシステム / 門脈周囲 / 正常画像解剖 / 慢性C型肝炎 / 肝線維化 / MRI / 高分解能 / Gd-EOB-DTPA造影剤 |
研究実績の概要 |
平成28年度は当院および連携施設である大分先端画像診断センターで、肝血管腫などの肝腫瘤の精査目的で撮像された正常対象者31名と、慢性C型肝炎患者34名を対象に肝深在系(門脈周囲)リンパシステムの画像評価を行った。撮像方法は、Gd-EOB-DTPA造影20分後(肝細胞相)の高分解能3T MRI(FFE3D ssfp法)で行い、その1mmスライス多断面再生画像を用いて評価した。結果として、正常対象者では、画質に関しては二人の読影者ともGrade 3(軽度のアーチファクト)の評価(81%, 87%)が最も高かった。評価不能である Grade 1(高度のアーチファクト)はなかったが、全対象者に波状のfree induction decay (FID) アーチファクトが認められた。描出能に関しては、全例で肝内三次分枝まで門脈周囲リンパシステムの同定が可能であった。門脈本幹における最大短軸径は2.9±0.4mmであった。これに対し、慢性C型肝炎患者の同最大短軸径は4.7±1.5mmと、正常対象者と比べ有意に大きかった (p<0.001)。また、線維化の指標となるFIB-4スコアは、4.6±0.4 (range 0.8-19.6)であり、門脈本幹における最大短軸径と線維化の程度(FIB-4スコア値)に有意な正の相関性がみられた。慢性肝障害における肝線維化は、生理・病理学的に類洞から中心静脈への血流障害を基盤にリンパ液の産生増加とリンパ管新生を生じることが言われており、今回の研究結果はその病態生理を良好に反映するものと思われた。 本研究は、平成29年4月に横浜市で開催された日本医学放射線学会で発表し、高い評価を得られた。また、本研究内容は英文雑誌Abdominal Radiology (インパクトファクター2.18)に投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画では、肝血管腫などの肝腫瘤の精査目的で、Gd-EOB-DTPA造影後高分解能MRI検査を受けた正常対象者(目標50名)を評価することが、第一の目標であった。目標である50名には達しなかったが、十分評価が行える31名の正常対象者が集まり、MRI画像の検討を行った。 一方、慢性C型肝炎患者では34名の対象者で同様なMRI画像の評価を行うことができ、消化器内科学講座との連携のもと、肝線維化の指標となるFIB-4スコアを算出してもらい、肝線維化の程度と門脈本幹におけるMRI上の最大短軸径との比較を行うことができた。同研究結果を英文雑誌AbdominalRadiologyに投稿し、受理された。 現在、同時並行で、肝細胞癌や胆管癌などの腫瘍性病変の患者を対象に、同撮像法を実施しており、未だ検討するに十分な対象数に至ってないが、一年目の研究計画としては、概ね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、正常者と慢性C型肝炎患者を対象に、Gd-EOB-DTPA造影20分後(肝細胞相)の高分解能3T MRI(FFE3D ssfp法)による門脈周囲リンパシステムの画像評価を行い、英文雑誌に投稿(受理済み)するに至った。この研究成果を基盤に、今年度は病的状態、特に肝細胞癌や胆管癌などの、門脈周囲リンパシステムに影響を及ぼし得る腫瘍性病変の患者を対象に同撮像法を推進して行き、できれば平成29年度末までに、30名を目標にしたい。そして、平成30年度早々には、門脈周囲リンパシステムに影響を及ぼし得ると思われる腫瘍性病変患者30名以上を対象として、今回確立した高分解能3T MRIでの正常門脈周囲リンパシステムとの比較検討を行う予定である。 そのためには、毎月一度行っているキャンサーボード(肝胆膵領域)で、消化器外科、消化器内科、腫瘍内科との連携を密に行い、MRI検査の適応となる患者がいれば、インフォームドコンセントを取得の上、同MRI撮像を実施するよう、推進して行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度購入予定であった画像診断解析用ワークステーションの納品が間に合わなかったため、次年度に購入する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は画像診断解析用ワークステーションなど本研究を進めるために必要な物品等の購入、また学会へ参加するための旅費に使用することを計画している。
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