研究課題/領域番号 |
16K10291
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
江本 美穂 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (10578735)
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研究分担者 |
藤井 博匡 札幌医科大学, 医療人育成センター, 教授 (70209013)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Theranostics / EPRイメージング / 炎症モデルマウス / ナイトロオキサイド / 抗炎症薬 / ROS |
研究実績の概要 |
近年、画像診断領域や分子イメージング領域では、治療(Therapeutics)と診断(Diagnostics)を同時に行うことの出来るセラノスティクス(Theranostics)という手法の実現が期待されている。これは診断・治療・予後観察など医療における一連の流れを、セラノスティクスの為のプローブを活用することで、個々の病状の観察と、その人にとって最もふさわしい治療を一体化して行うことを目的とした、医療における新しい流れである。本研究では磁気共鳴分野で利用可能なセラノスティクスのための新規プローブの開発をし、酸化ストレス状態を可視化できるEPRイメージング法により、炎症モデルマウスの脳内で生成される活性酸素種の抑制(治療としての側面)と、脳内酸化ストレス状態の画像化(診断としての側面)を同時に行える新規手法の確立を目的とした。具体的にはセラノスティクスの為の抗炎症剤―ナイトロオキサイドハイブリッドプローブを合成、投与し、脳内の酸化ストレス動態の観察と抗炎症作用の評価の双方を同時に行う事を着想した。 本研究の意義として、この研究により、脳内炎症モデル動物の活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)生成状態や分布状況が時系列で解析可能であり、さらに抗炎症作用効果が脳内ラジカル濃度の変化として現れる事が期待される。このようなハイブリッド薬剤の効果を脳内のラジカル量やラジカル分布として計測、画像化する試みは世界初であり、成功すれば医学・薬学界に大きく貢献できるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度の計画としては、ハイブリッドプローブ合成班による、「BBB透過性ナイトロオキサイドを利用したハイブリッドプローブのデザイン検討・合成」とEPRイメージング班による、「EPRイメージング法によるマウスを用いたハイブリッドプローブの検証」を並行して進めていく予定であった。平成28年度中に合成班により検討、合成されたTheranosticsプローブを用いて、EPRイメージング実験を行うことができた。さらにこのTheranosticsプローブを脳炎モデルマウスに投与しその実効性を検証することまでできたため、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は平成28年度中の実験結果を踏まえて、さらにTheranosticsプローブの種類を増やして、プローブの有用性を検証していく計画である。これからの課題としては、平成28年度まではBBBを透過することが解っていたナイトロオキサイドを用いて、Theranosticsプローブの開発を行っていたが、今後はプローブの種類を増やすためにBBB透過性の認められていないナイトロオキサイドを用いて、Theranosticsプローブの開発を進めていくため、平成28年度より、さらに高度な知識や合成技術が求められる事が想定される。この手法でTheranosticsプローブの開発が進まない場合には、BBB透過性のあるプローブから検討・合成することも視野に入れて研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品を効率よく購入するよう努力をして物品費をできる限り押さえて使用したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はデータ解析等が増えてくる事を見越して、データ整理をしてくれる人材の為の謝金として使用する計画である。
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