研究課題/領域番号 |
16K10305
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
徳丸 阿耶 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60507391)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | MRI / 嗜銀顆粒性認知症 / アルツハイマー病 / 画像病理連関 / voxel based morphometry / 用手的体積測定法 |
研究実績の概要 |
1:認知症精査画像2005年12月6日から2017年3月31日まで、認知症精査でMRを施行した16480例につき、前方指摘に得られた80開頭剖検例では、嗜銀顆粒性認知症(DG)を筆頭とするsenile taupathyがAllzheimer's disease(AD)、DLBに匹敵、あるいは凌駕し、高率に存在することを改めて示した。 2:剖検により診断の確定したDG9例(延検査14)と AD8例(延検査20)、および剖検により変性疾患がない事を確認したかPIBによるアミロイド沈着が否定されたコントロール(normal control:NC)10名(延検査16)では、Voxel based specific regional analysis sytem for Alzheimer's disease(VSRAD)で、ADとDGの分別は困難。 3:剖検例の形態的詳細評価、病理知見に基づき、海馬、扁桃体、嗅内皮質、迂回回の体積を用手的に計測:初期ADの変性、萎縮部位として知られる嗅内皮質は、DG萎縮が重なる。体積計測と、3群比較ノンパラメトリックのSteel Dwass検定では、左右差のある迂回回近傍萎縮がDGとADの鑑別点となる可能性が示された。用手的体積測定の経験は、DGにおいて迂回回から嗅内野皮質の最も内側面の直線化および扁桃腹側の鉤部の直線化、側頭極の萎縮が特徴的であった。DGの萎縮は側頭葉内側から側頭極にかけ限局的なものが多く、ADは病期に従い全脳の委縮が明瞭となる。 4:視診上での鑑別点ポイントの提案と読影実験:エキスパート2名での読影実験は、正診率73%と有用性を示した 5:2011年ADの国際診断基準で示された複数のバイオマーカーとの組み合わせは、DG、ADの鑑別に有用性がある。脳脊髄液検査、脳血流SPECTは、DG,AD鑑別に一定の有用な情報を与える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① 変性認知症疑いで検査された16480例のMRI施行例を、臨床、画像で追跡し、80例の剖検を得、神経病理所見と、臨床、画像所見の対比を行った。 ② 視診上の評価および、現在流布している簡便ソフトでは鑑別困難であった、嗜銀顆粒性認知症、アルツハイマー病の鑑別ポイントが迂回回に近傍にあることを、統計解析上も示唆しうる結果を得た。 ③ また、臨床現場での診断に寄与するために、視診実験も行い、教育による高齢者タウオパチーとアルツハイマー病との鑑別についても有用な知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
① 今回の検討までに得られた、アルツハイマー病と嗜銀顆粒性認知症の神経画像上の鑑別ポイントを、さらに洗練させ、簡便な鑑別ソフト開発を進める。 ② 時系列によるアルツハイマー病と嗜銀顆粒性認知症の萎縮の局在、全脳萎縮の進捗の差異について、画像統計解析手法を用い、客観的な鑑別点を探る。 ③ 視診診断のためのブラインドテストの結果はある程度良好であったが、いずれも13年、4年の認知症画像診断の経験がある神経放射線専門医によるものである。今後、認知症画像の読影ポイントの教育を進め、視診診断の可能性を広めるための方策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は用手的解析に注力し研究を進めた。2018年度には、複数のSPM,VBM、free surfer,可能であればスカラー解析も含めての俯瞰的画像解析に進む予定であり、人件費、謝金を繰り越す必要があった。
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