研究課題
当初の計画はMRI画像を用いて早期慢性膵炎患者の抽出を試みるものであったが、早期慢性膵炎の確定診断が得られる患者数が一定量見込めなかったため、既報の報告結果に従いHbA1c値による間接的な膵線維化診断を新たな研究目的に設定した。膵疾患が疑われるまたは既にCT等で疾患が同定されている患者に対して膵造影MRIを施行した。通常のルーチン撮像に加え、造影前後にT1 mapping pulse sequenceを撮像した。T1 mapping pulse sequenceは約20秒の呼吸停止下で撮像でき、全ての患者において問題なく撮像可能であった。造影前後のT1 mapより、膵実質および大動脈のT1値をそれぞれ計測し、細胞外液分画を算出した。細胞外液分画とHbA1c値との相関および非糖尿病群、境界型糖尿病群、糖尿病群で3群比較を行った。細胞外液分画はHbA1c値と中等度の正の相関を示し(r = 0.60, P < 0.001)、糖尿病群においては他の2群と比較して有意に高値を示した(P < 0.001)。また、糖尿病群と他の2群を区別するための診断能は感度100%、特異度93.7%、ROC曲線下面積0.99であった。今回の検討では病理学的な膵線維化との関連まで踏み込むことができていないが、過去の報告を参照するに、間接的にではあるものの細胞外液分画と膵線維化に一定以上の関連があることが推察される。T1 mapping pulse sequence を撮像することで、T1値から算出できる細胞外液分画が膵線維化の程度を予測する指標となる可能性が示唆され、早期慢性膵炎患者においても今後の臨床応用が期待できる結果となった。
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