研究課題/領域番号 |
16K10314
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
海野 真記 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (30649059)
|
研究分担者 |
前田 正幸 三重大学, 医学系研究科, 教授 (70219278)
野本 由人 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10252363)
中山 良平 立命館大学, 理工学部, 准教授 (20402688)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 頭頸部腫瘍 / 機能的MRI撮影法 / 画像解析 / arterial spin labeling |
研究実績の概要 |
(目的)本研究の目的は3 テスラMRI を使い、頭頸部腫瘍における血流評価と拡散の情報を非侵襲的に取得する新しい撮影法と、それらのデータを正確に定量評価するための解析ソフトウェアを開発することである。血流評価にはpseudocontinuous arterial spin labeling (pCASL)、拡散の評価にはdiffusion (DWI)を使用する。平成28年度には従来の撮像法と比較して3D TSE 法を用いた機能的MR撮影法が頭頸部病変の診断に優れていることを実証した。平成29年度は新たに開発した解析ソフトを用いて腫瘍血流を実測し、診断に有効であるかを検討した。 (方法) 3D TSE pCASLを使用し、解析ソフトを用いて腫瘍血流を計測した。1)唾液腺腫瘍においてワルチン腫瘍、多形腺腫、悪性唾液腺腫瘍での腫瘍血流を検討した。2)頭頸部腫瘍患者において、化学放射線療法前後で腫瘍血流の相違を検討した。 (結果) 1)唾液腺腫瘍ではワルチン腫瘍が多形腺腫、悪性唾液腺腫瘍よりも有意に腫瘍血流が高く、さらに悪性唾液腺腫瘍の方が多形腺腫よりも有意に血流が高かった。2) 化学放射線療法後では治療前と比較して腫瘍血流は低下した。 (考察) 唾液腺腫瘍では腫瘍血流を評価することでワルチン腫瘍、多形腺腫、悪性唾液腺腫瘍の鑑別に役立つと考えられる。頭頸部悪性腫瘍で腫瘍血流を計測することで放射線化学療法中の段階で治療効果を評価できた。従来の撮影方法に比べ信号雑音比が高く、歪みが少ない撮像方法と開発した解析ソフトの組み合わせによって正確な血流評価ができたと考えられる。 (結論) 機能的MR撮影法で得られた画像データを開発した解析ソフトで血流を計測することで唾液腺腫瘍の鑑別診断および頭頸部悪性腫瘍での治療効果評価を可能とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度では1) 定量評価を行う解析ソフトを完成できた。 2) 開発したソフトウェアを用いて頭頸部腫瘍への臨床的な検討を行うことができた。3) 頭頸部悪性腫瘍の放射線治療・化学療法での早期治療効果判定に血流の機能的な情報が有用であったかを実際の頭頸部腫瘍症例で検討できた。 唾液腺腫瘍ではワルチン腫瘍が多形腺腫、悪性唾液腺腫瘍よりも有意に腫瘍血流が高く、さらに悪性唾液腺腫瘍の方が多形腺腫よりも有意に血流が高かった。腫瘍の血流のデータを形態画像にフュージョンさせ、ピクセル毎に対応した血流のマップも作成し、視覚的な評価としても臨床現場に即した評価が行えた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、平成29年度までに行った研究結果を参考に、1) 解析ソフトウェアで計測した唾液腺の腫瘍血流と拡散強調画像を比較し、 2) 頭頸部悪性腫瘍の放射線治療・化学療法での早期治療効果判定に拡散と血流の機能的な情報が有用性をもたらすかについて検討する予定である。 ソフトウェアを使用しての定量化で①臨床例における唾液腺腫瘍でのワルチン腫瘍、多形腺腫、悪性唾液腺腫瘍と悪性の鑑別、②腫瘍の質的診断(組織特異性)が拡散と血流の定量的評価から可能かを多様な腫瘍で検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)次年度使用額が生じた理由としては、まず、研究図書の購入、海外学会などへの出張が予定より若干少なかったことがあげられる。 (使用計画)研究図書の購入を増やすこと、学会への参加のための旅費に使用すること、英語論文の英文校正料として使用すること、などを計画している。
|