研究課題/領域番号 |
16K10317
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浦山 慎一 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定助教 (10270729)
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研究分担者 |
鈴木 崇士 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定助教 (10572224)
武田 和行 京都大学, 理学研究科, 准教授 (20379308)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 7T-MRI / シムコイル |
研究実績の概要 |
7テスラMRI装置において、生体組織と空気との境界面で生じる不均一磁場は、B1不均一問題と並び、最大の問題である。本研究の目的は、我々が有する超薄型アクティブシムコイル開発技術を用いて、限られたボア内に、安価かつ有効性の高いインサート型シムコイルを開発・設置し、またその制御プログラムも合わせて開発、その有用性を評価することである。 本年度は、システム設計フェーズとして、ハードウェアの基本設計を行った。まず、シムコイルの設置場所としては、最も被験者に近く、既存のシステムと干渉せず、かつ容易に設置できるよう、Nova社製RF送信・受信コイルの送信コイル内側の上半周分、及び、送信コイル外側の上部3/4周分と決定した。送信コイルは、内/外径がそれぞれ292/375mm、長さ280mmの円筒をしているが、より詳細に送受信コイルの3次元形状を把握するため、3Dスキャナー(Creaform社製HandyScan 700)を用いて計測した。また3T-MRI装置により得られたFieldmap画像から、脳実質内の磁場不均一は最大1~2ppm(7~14μT)ではあること、しかしながら、高い高次項を含み、一般的なシムコイルデザインである球面調和関数をベースとするものでは、限られたチャンネル数では補正効果も限界が有り、困難であることが分かった。 以上の結果から、単純なループコイルを複数アレイ状に並べた非球面調和関数型マルチコイルシステム(Wachowicz K, Research and Reports in Nuclear Medicine, 2014)を採用することに決定した。ただその設計には、使用予定であった傾斜磁場コイル/シムコイル設計ソフトが対応できないため、専用の設計システムの開発を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、本年度にシムコイルの設計を終了し、次年度にプロトタイプ機の開発を開始する予定であった。しかし、シムコイル設計を検討した結果、従来型の球面調和関数をベースにしたものでは大きな高次項を含む磁場不均一を補正できないことが明確となり、非球面調和関数型マルチコイルシステムに変更した。そのため、設計ソフトウエアの開発を新たに行う必要が生じ、そのために若干、計画よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、開発を開始した非球面調和関数型マルチコイルシステムのための設計プログラムを完成させ、プロトタイプ機のシムコイル設計、その製作を行う。また本システムに特化した制御手法を考案し、MRI装置に開発実装、プロトタイプ機の有用性を確認する。詳細は以下の通り。 設計プログラムに関しては、既に本年度、想定したシムコイルデザインから磁場分布を計算するための順問題解析プログラムは完成している。そこで次年度は、このプログラムを基に、シムコイルの最適設計を行うためのプログラムを開発する。 シムコイル作製においては、申請者等が今までに培ってきた超薄型シムコイル開発技術を用いる。また、RF送信コイル内側に設置するループコイルに関しては、送信波との干渉を最小限に抑制するための試みとして、並列共振回路の組み込みを考慮する。加えて、RF送信コイル外側のシムコイルに関しては、充分なスペースがあることを鑑み、冷却系の組み込みも考慮する。 制御手法に関しては、当初、懸念されていた冗長性の問題は、非球面調和関数型マルチコイルシステムを採用したことにより軽減されたと考えられる。そのため、まずは一般的な、fieldmap画像から得られた不均一磁場分布を、各ループコイルが作る磁場分布の線形和で補正する手法をベースに考案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度購入予定であった設計用PCを、運営交付金により購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額は、次年度に作製するプロトタイプ機の製作費に使用する。具体的には、使用する銅線や3Dプリンタの樹脂、電子部品などである。特にMRI装置内で用いる電子部品は非磁性品である必要があり一般的なものよりも高価であるため、その部品の購入費に充当する。
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