研究課題/領域番号 |
16K10320
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
納冨 昭弘 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80243905)
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研究分担者 |
眞正 浄光 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (20449309)
若林 源一郎 近畿大学, 原子力研究所, 准教授 (90311852)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己放射化法 / CsI(Tl)シンチーレータ / 高エネルギーX線治療装置 / 光中性子 / CCD / 生成放射能 / イメージング |
研究実績の概要 |
H29年度は、前年度に行った専用読み出しシステムの試作結果をもとに、暗箱を自作のものから改良するために市販改造品に変更して、中性子照射実験の研究を進めた。まず、既製品の暗箱に冷却型 CCD カメラ装着機構を追加して発注し、使い勝手のよい観測システムを製作・構築した。また、高さの微調整が可能なラボジャッキを用いることにより、被写体CsI板の位置合わせの再現性の精度が著しく向上した。画像の読み出し制御と解析は、CCDカメラの制御ソフトを用いてオンラインにて行った。CsIシンチレータの板は、わずかながら潮解性を示すのでむき出しのまま長期間使用していると表面状態が劣化してくる為、追加で20 mm x 20 mm x 2mmの小型のCsI結晶の板をアルミハウジングと石英ガラスにて密封して使用した。これらの新たに製作したCsIシンチレータ板に対して、治療用X線ライナックで中性子照射実験を行い、中性子強度の分布測定を行った。また、H29年度に再稼働した近畿大学原子炉UTR-KINKIの照射場において、75 mm x 75 mm x 2mm の大型CsIシンチレータ板に対して中性子照射を行い、Cdパターンを用いて画像取得実験を行った。照射終了後の発光強度の経時的な減衰成分が、I-128の半減期(25分)とCs-134mの半減期(174分)により構成されていることを利用して、画像の各ピクセル毎に半減期に基づくフィッティング処理を行うことにより、I-128成分、Cs-134m成分、γ線に起因する残光性分、バックグランド成分に分離して抽出することにより、個別の明瞭な画像取得に成功した。我々は、このような画像処理手法を"the decaying self-activation imaging technique"と呼ぶこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
専用の読み出しシステムの改良とCsI板のアルミハウジング・石英ガラス封入加工、ならびに読み出し手法の完成により、照射実験のための準備はほぼ整ったと考えられる。また、昨年度問題となっていた、CsI板の表面処理の状態により画像上にムラが観測される問題についても、一様なX線照射による基準画像との比較による補正方法を新たに考案し、解決することができた。 更に、これまで製作したCsI板の 最大面積は75 mm × 75 mmであったが、これらを4枚組み合わせてひとつのハウジング内におさめることにより、実効面積150mm x 150 mm のCsI板の製作を行った。 H30年度は、当初予定していた近畿大学原子炉での照射実験を進めることにより、中性子により生成する放射能量とCsIシンチレータの発光強度の詳細な検討を行うことができると考えている。また、大型のCsIシンチレータ板を用いることにより、単一のシンチレータによる画像化の検討も進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は、近畿大学原子炉UTR-KINKIから得られる高強度中性子を用いることにより、CsIシンチレータに生成する放射能量とそれに伴う 発光量の関係を詳細に評価できるようになることが期待される。定量的な評価が可能となるように研究を進める予定である。また、単一のシンチレータを用いた中性子画像の取得方法についてもさらに改良を進めることを考えている。 以上にあわせて、中性子入射によって生成する放射能量の情報から、中性子の入射量(中性子フルエンス、線量)を評価する方法、並びに、シンチレータの残効成分から中性子に付随する光子線(X線、γ線)の情報を取得する方法についても検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者に分担した配分額に、わずかながら未使用分が生じた。本年度の適切な時期に予算執行することを確認する。
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