研究課題/領域番号 |
16K10322
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤淵 俊王 九州大学, 医学研究院, 准教授 (20375843)
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研究分担者 |
杜下 淳次 九州大学, 医学研究院, 教授 (40271473)
藪内 英剛 九州大学, 医学研究院, 教授 (70380623)
松浦 俊治 九州大学, 医学研究院, 講師 (10532856)
木下 義晶 九州大学, 大学病院, 准教授 (80345529)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | テトラファントム / 臓器吸収線量 / 小児 |
研究実績の概要 |
医療施設において放射線を利用した診療は必要不可欠なものとなっている。小児においては放射線感受性が成人と比較して高いものが多く、一般撮影やX線CT (Computed Tomography)等の放射線被ばくを伴う検査では撮影条件の最適化が重要となる。本研究では小児の胸部一般撮影による被ばくに注目し、臓器吸収線量を評価するためのコンピュータファントムを作成した。作成したファントムは多数の四面体から構成されるテトラファントムであり、四面体の数による計算時間を比較し、適切な計算条件を検討した。 2歳女児のCT画像ボリュームデータを用いて胸部領域の臓器 (肺、心臓、肋骨、脊柱および体輪郭)をセグメンテーションし、3次元で表示した後ポリゴンデータとして臓器形状や表面を処理した。ポリゴンデータはフリーのソフトを用いて連続四面体に変換した。また、このソフトを用いて四面体の数を変化させ、それぞれモンテカルロコードに取り込んだ。使用したモンテカルロコードはPHITS (Particle and Heavy Ion Transport code System)で、四面体の数の違いに対して肺の吸収線量、計算時間、データ容量を比較した。 連続四面体から構成されるテトラファントムを作成した。四面体の数による計算時間には大きな差はみられなかった。 テトラファントムについて、CTデータから作成する過程で臓器、組織の形状に平滑化処理を加えるため厳密に元のデータに基づいたものが再現されているとはいえない。しかし、放射線防護の観点から吸収線量を評価すという目的においては大きな問題ではないと考える。コンピュータにかかる負荷や計算時間を考慮すると、計算時間に大きな差がない場合には四面体の数は臓器等の形状を大きく変化させない程度に削減することが有効と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に必要とする小児2歳から10歳の男女のCTボリュームデータを、研究実施施設の倫理委員会に申請した上で取得し、3Dプリンタで出力可能なstlフォーマットで3D連続四面体のデジタルファントムを作成した。作成にあたり連続四面体数の最適化を検討することで、効率化を図った。またこのファントムを用いてモンテカルロシミュレーションにより胸部X線撮影における線量計算が実施可能なことを確認した。ファントム作成時のパラメータを調整し、計算効率の良い条件を導き出すことで、今後の研究を進めるベースができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に作成したデジタルファントムデータを利用して、3Dプリンタにより実物のファントムを作成する。作成方法を工夫することで、人体の組成に近い構造のファントムを作成すること目標とする。この手順が確立すればあとは別の別の年齢、性別の患者のCTボリュームデータでも同様に3Dプリンタによるファントムの作成および、モンテカルロシミュレーションによる臓器線量計算が実施することは見通せるため、まず基礎的なパラメータ、3Dプリンタの作成方法を確立させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画当初、3Dプリンタの購入を考えていたが、安価なプリンタでは作成精度に問題があり、研究機関に共用可能な3Dプリンタがあることが判明し、プリンタ購入予定分の費用が執行できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
3Dプリンタ本体を購入しない分、3Dプリンタの原材料費を増額し、より多くの種類および組成のファントムを作成し、研究により得るデータ量を増やす。
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