研究課題/領域番号 |
16K10331
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
横山 須美 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 准教授 (20354699)
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研究分担者 |
黒澤 忠弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (90356949)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水晶体 / インターベンショナルラジオロジー / 等価線量 / 医療スタッフ / 散乱X線 / エネルギースペクトル / 線量評価 |
研究実績の概要 |
① 情報収取: 2016年5月に南アフリカで開催された国際放射線防護学会(IRPA14)に参加し、IRPAのタスクグループが実施した各国(日本含む)の水晶体線量評価、モニタリング、防護方法の検討状況等に関するアンケート結果及びそれらを取りまとめた報告書についての情報等、各国の動向等を収集するとともに、意見交換を行った。また、国内の日本放射線技術学会や日本保健物理学会研究発表会に参加し、研究内容を発表するとともに、関連研究の情報収集を行った。このほか、文献調査により、日本及び各国のインターベンショナルラジオロジー(IVR)の医療スタッフの被ばくに関する過去研究情報を収集した。 ② 高精度線量評価手法の確立: 実際の臨床現場において、Cアーム型(X線管球は患者用ベッド下側)の装置を用い、循環器内科の医師に防護眼鏡の左右、内外、左頸部、左胸部、左腰部にOSL(光刺激ルミネッセンス)線量計を装着し、線量測定を実施した。1日ごとに線量計を取り換えて測定した結果、主に第一術者位置に立つ場合には、1日当たりの線量が、数十μGyから数百μGyとなり、十分な評価が可能なことが確認できた。合わせて、このときの線量計装着位置による線量の違い、防護眼鏡内外の線量の違いに関する知見を取得した。また、左胸部に装着した電子線量計で測定した結果等から、手技の時間、術者立ち位置、照射時のX線管球位置、術者の身長等が、線量に影響を与える要因となることが明らかとなった。 実際の臨床現場に設置したCアーム型の装置を用い、第一術者位置において、CdZnTe検出器を用いた散乱X線のエネルギースペクトル測定を実施した。この結果、特定方向から入射した散乱X線のエネルギースペクトルを得ることができた。この結果を簡易計算結果を比較したところ、両者がほぼ等しいことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度実施計画に記載した、① 海外・国内の線量評価手法・IVR 医療スタッフの被ばくの最新情報収集及び② IVR 医療スタッフに対する高精度線量評価手法の確立の2項目について、記載内容と照らし合わせ、いづれの項目についても、計画書に従い、概ね計画通りに情報収取、実験・測定、分析等が実施されているとともに、成果が得られている。このことから、概ね順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、計画書記載の平成29年度以降の計画に従い、以下の内容を実施する。 ② 高精度線量評価法の確立:平成28年度に得られた基礎データをもとに、本格的な線量測定及び評価を実施し、高精度線量評価法を確立する。特に、眼(水晶体位置ででの3mm線量当量)と頸部位置での線量(現行法令において、通常、水晶体の等価線量を評価するための位置。1cm及び70μm線量当量。)の関係性を明らかにする。さらに、従来評価法で評価した場合の不確かさを明らかにする。このほか、手技内容、手技にかかる時間、立ち位置、測定位置と線量との関係について、詳細な分析を実施、最適な評価法を探る。散乱X線のエネルギースペクトル測定では、検出器への入射放射線数を抑えるため、検出器にコリメータを装着する必要がある。このため、検出器に入射する放射線の方向が非常に限定的になる。このため、複数方向からの測定を実施し、総合的な評価を行うとともに、計算による評価との比較を試みる。
③ 線量への影響要因の解明:平成28年度及び上記②で得られた結果をもとに、実際の臨床現場では条件設定が困難でデータを取得することができない項目のうち、重要性の高い(線量への寄与が大きい)要因を抽出し、ファントム実験を実施する。臨床現場で得られたデータと相互に比較し、線量に影響を与える要因が水晶体の等価線量に寄与する度合(割合)を探る。特に、重要性の高い要因として、ファントム試験が必要となるものは、管球位置、防護眼鏡、防護板装着位置が予想される。防護眼鏡、防護板に関するファントム実験では、防護板の種類(形状)、線量計位置、装着(使用)方法(防護眼鏡や防護板と水晶体との間隔等)等に着目する。 これらの研究と合わせ、引き続き、入射空気カーマから3 mm線量当量への換算係数の取得のため、国際機関、諸外国等(日本の現状も含む)の情報収集を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、物品を購入した。その代金が支払請求額よりも低価格(-9円)であった。しかしながら、この額を使用して購入等が可能なものがなかったため、繰越金とした。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、平成29年度の計画に大きな変更はない。繰越金は、物品購入費等の一部として使用する。
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