研究課題
①情報収集、:文献調査として、意見公募中であったICRU/ICRP共同刊行予定の新しい実用量に関するレポートより、今後の水晶体の線量評価法に対する知見を得るとともに、ICRPが2011年に勧告した水晶体の等価線量限度の各国の規制取入れ状況を各国の規制機関のweb情報を調査した。②高精度線量評価法の確立:平成28年の心臓カテーテル検査・治療に携わる循環器内科医師の防護メガネ内外、頸部及び胸部の線量測定結果及び本年度に追加的に実施したTACE(肝動脈化学塞栓術)やステントグラフト等に携わる放射線科医の防護メガネ内外、頸部及び胸部の線量測定結果、合わせて実施したファントムを用いた模擬実験による異なる線量計の結果の比較検討を行った。これらの結果から頸部、胸部に比べメガネ外側の線量は低く、防護メガネ未着用時には頸部線量で評価の可能であること、防護メガネの下部より散乱線が入射することにより、防護メガネの防護効果は公称値を十分満足できない場合があること等を明らかにした。また、患者からの散乱線のエネルギースペクトルの測定・評価に関しては、林ら(2017)の学会発表及び文献より、直接線のスペクトルと散乱線のスペクトルの違いに関する情報を入手し、これまで使用してきた線量計(OSL)では評価できなかった3mm線量当量(水晶体の等価線量)の評価を可能にした。③線量への影響要因の解明では、②で得られた結果から、撮影回数が術者の線量を高めるものの、透視時間が長くなると、透視の術者の線量への寄与が無視できないこと、管球方向については、密度の高い組織が照射に入るLAO方向において高くなること等が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度に実施を予定していたIVR術者(放射線科医等)の水晶体等の線量測定及びファントムを用いた実験を概ね計画通りに実施した。測定結果の解析についても、取りまとめ、日本保健物理学会において発表した。本研究と関連のある最新の国際動向、線量計特性、モニタリング方法等に関する文献等を調査し、知見を収集した。
平成30年度においても、計画通り実施できると考えられる。本年度は、まだ十分に得られていないTACEやステンドグラフトに携わる医療スタッフの線量を追加的に実施し、さらなる眼の等価線量評価分析のためのデータを蓄積する。防護メガネの他、防護板の有効利用方法等を検討する。防護板については、防護板の挿入位置や術者の身長、立ち位置等の評価を行う。合わせて平成28年度及び29年度に得られた成果から、水晶体の等価線量の高いIVR術者に対して、線量に影響を与える要因についても引き続き検討を行う。被ばく低減効果を明らかにし、ICRPが勧告した新しい水晶体の線量限度(5年間の平均で20mSv/年)を十分に下回るようにすることが可能かを、実際の測定やファントム実験から明らかにする。また、水晶体の等価線量評価をより高精度化するために、実際の場を模擬した散乱線場において、複数方向からコリメータを使用したエネルギースペクトル測定方法を検討し、線量計のエネルギー特性との関係を明らかにする。これまで得られた測定方法、水晶体の放射線防護に有効な方法等を取りまとめ、放射線管理実施者が利用できるデータベースを作成する。引き続き、新たな関連情報等について収集を実施する。平成30年度は、平成28年度及び29年度に実施した研究内容について、国内外において学会発表を行うとともに、最終年度となるため、これまでに得られた成果の総とりまとめを行う。
平成30年度に国際学会及び国内学会への参加を予定しており、その参加費、旅費として使用する。また、分担者へ配分する。その他、研究に必要な消耗品(用紙等)を購入する。学会参加費:11千円 学会参加のための旅費:200千円、消耗品:5.5千円分担者配分:100,000円
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
J. Radiol. Prot.
巻: 37 ページ: 659-683
10.1088/1361-6498/aa73e8