研究課題
がんの治療効果向上には、「がん幹細胞」を制御することが重要である。がん幹細胞は普段分裂を停止しており、DNA修復能(NHEJ修復)と生存シグナル(Akt生存経路)が亢進しているため、通常の治療が効きにくく、再燃・再発・転移の原因になることが報告されてきた。これまでに我々は、温熱ではNHEJ修復を、重粒子線ではAkt生存経路を抑制することを見出してきた。また、固形腫瘍内の低酸素領域は、放射線や抗がん剤に抵抗性で予後不良の原因となることが問題視されている。一方、DNA二本鎖切断の指標として知られるγH2AX蛍光強度は、低酸素においてX線では顕著に減少したのに対して、炭素線および温熱では減少が顕著に抑えられることを明らかにしてきた。特に、重粒子線では飛跡に沿った大きなγH2AXフォーカス形成には低酸素の影響を受けにくいのに対して、周辺の小さなγH2AXフォーカス形成は、X線と同様に低酸素環境下で、減少することを見出し、X線治療よりも重粒子線治療や温熱治療は放射線抵抗性の低酸素細胞に対して、効率的にDSBを生成することから、有効であることを裏付けてきた。そこで、DNA損傷応答シグナルを阻害する市販の薬剤Aの有無による炭素線およびX線と43℃温熱の生存率曲線からD37を求め、常酸素下、炭素線は1.5、X線は1.9、温熱は1.2の増感比を得た。残念ながら、低酸素下でのデータを得るには至らなかった。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Thermal Med
巻: 34 ページ: 45-51
https://doi.org/10.3191/thermalmed.34.23
Int J Hyperthermia
巻: 34 ページ: 795-801
https://doi.org/10.1080/02656736.2017.1370558