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2016 年度 実施状況報告書

IVR技術による標的組織の微小循環系の制御を利用した抗腫瘍療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K10343
研究機関金沢大学

研究代表者

香田 渉  金沢大学, 医学系, 准教授 (30401920)

研究分担者 蒲田 敏文  金沢大学, 医学系, 教授 (00169806)
吉田 耕太郎  金沢大学, 医学系, 助教 (30645130)
南 哲弥  金沢大学, 附属病院, 准教授 (60436813)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード癌 / インターベンショナルラジオロジー / 血管透過性
研究実績の概要

本研究では標的組織の微小循環系および血管透過性の制御による抗腫瘍効果の向上を目的としたトランスレーショナルリサーチを進めている。
初年度である本年は、ヒト肝細胞癌に近い肝癌自然発生モデルラットの安定した作成に着手し成功した。従来の研究で用いられてきた中型~大型実験動物へのVX2などの腫瘍移植モデルはヒト肝細胞癌に相当する癌環境を再現しているとは言い難いが、こうした中型~大型動物での自然発癌の肝癌モデルの作成は報告されていなかった。今回、肝癌自然発生モデルラットを作成したことにより、ヒトの原発性肝細胞癌に相当する癌環境での研究を進めることが可能となった。また、こうした小動物での経血管的IVR技術を用いた実験を実施するため、小動物に適した短小な細径マイクロカテーテルを新たに開発した。このカテーテルを用いた経動脈的カテーテル操作の習熟に努めることで、安定した手技で実験を行うことが可能になった。こうして確立した実験系のもとで、肝癌の腫瘍内および腫瘍周囲の血管透過性を評価する前段階として、肝障害モデル(ラット)およびコントロール(ラット)におけるアルプロスタジル経動脈的投与における肝実質の血管透過性の評価を行った。血管透過性の評価にはエバンスブルーの漏出を定量するMiles assay法を用いたほか、新たなモダリティである光音響イメージングの血管透過性評価における有用性についても検討した。
今後は、肝癌自然発癌モデルおよび肝転移モデルを用いて、各種血管作動性物質の血管透過性に与える影響、漏出した物質・薬剤の組織内分布および濃度、各種キャリアの組織内分布と血管作動性物質投与による組織内分布の変化について評価していく。また、各種粒子の流体内・生体内での挙動、光音響イメージングの臨床応用、作成した腫瘍モデルの表面マーカーについての検討、極細径マイクロカテーテルの開発も並行して進めていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

生理活性物質の経動脈的投与による背景肝および肝腫瘍の血管透過性の変化について検討するため、今年度は肝癌モデル動物の作成と実験系の確立および障害肝の血管透過性の評価を行った。
従来、経血管的インターベンションの研究では、手技の難易度や安定性から家兎やミニブタといった中型~大型の実験動物へのVX2などの腫瘍移植モデルが用いられる傾向にあったが、自然発癌の肝癌モデルの作成は報告されておらず、ヒトの原発性肝細胞癌に相当する癌環境を再現しているとは言い難い状況であった。そこで、ラット(系統Crlj:WI)へのDEN(diethylnitrosamine)投与により肝障害モデル、肝癌自然発癌モデルの作成を試み、動物実験用US、血管造影、CT、病理組織学的手法により、実験に用いた33匹全例で肝障害もしくは肝癌の発生を確認した。
次に、麻酔方法の検討および新たな短小細径マイクロカテーテルの開発を行い、こうした小動物での安定した血管造影手技を確立した。
その後、肝癌の腫瘍内および腫瘍周囲の血管透過性を評価する前段階として、障害肝における血管透過性の評価を行った。薬剤の血管透過性への影響を見るため、障害肝モデルラット(16匹)とコントロール群ラット(30匹)に対して、アルプロスタジルを総肝動脈あるいは固有肝動脈から動注し、血管透過性を評価した。血管透過性の評価にはエバンスブルーの漏出を定量するMiles assay法を用い、in vivoでエバンス-ブルー投与後に血液を洗い流し、取り出した肝臓から抽出した色素を吸光度計にて測定した。また、経門脈的投与や経静脈投与についても検討を行った。さらに、新たなモダリティである光音響イメージングの血管透過性評価における有用性についても検討した。
小動物での実験系確立に時間を要したため、当初予定の家兎を用いた実験は実施できなかった。

今後の研究の推進方策

今後は、作成したラット肝障害モデルおよび肝癌自然発癌モデルを用いて、以下の実験を推進していく。
まず、アルプロスタジル以外の血管作動性物質(ヒスタミン、血小板活性化因子、エンドセリン受容体拮抗薬など)を用いて、各薬剤の血管透過性に与える影響について本年度と同様の方法により評価する。また、血管外漏出の評価に蛍光標識(FITC)デキストランを用いることにより、漏出した物質の組織内分布について光音響イメージングあるいは組織学的に評価する。肝線維化の程度と血管透過性の多寡についても各種アッセイと組織学的評価と比較しながら検討する。さらに、投与薬剤の生体内分布および臓器集積性について、採血による血中薬剤濃度測定および高速液体クロマトグラフィー(HPLC法)などによる組織内薬剤濃度測定にて評価する。
また、キャリアの組織内分布を確認するため、現在臨床応用されているヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステルならびにゼラチン粒、血管塞栓用マイクロスフィアなどの塞栓物質を肝癌モデルに注入し、その組織学的評価を行う。そのほか、現段階で臨床応用されていない高分子ミセル、ナノ粒子、マイクロ粒子、セルロースビーズ、蛍光ビーズなどの粒子についても、血管内投与による組織内分布および塞栓強度などを評価し、Drug deliveryの可能性に関して検討する。血管作動性物質の投与によるキャリアの組織内分布の変化についても検討する。
家兎の肝臓にVX2腫瘍を移植した肝転移モデルでも肝癌モデルと同様な検討を行う。
そのほか、各種粒子の流体内、生体内での挙動についてのin vitroあるいは in vivo観察、光音響イメージングの臨床応用についての検討、作成した腫瘍モデルのEOB-MRI画像とOATP、GSなどの免疫組織化学的評価の検討、より選択性を高めた薬剤注入を行うための極細径マイクロカテーテルの開発も並行して進めていく。

次年度使用額が生じた理由

ラットを用いた肝障害モデルならびに肝癌自然発癌モデルの作成、さらにこれらを用いて安定した手技で実験を行うための短小な細径マイクロカテーテルの開発を含む小動物での実験系確立に時間を要したため、当初予定していた家兎を用いた実験を実施することができなかった。そのため、一部の実験を次年度に持ち越すこととなり、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

平成28年度に小動物での実験系を確立することができ、平成29年度に予定している小動物を用いた血管作動性物質あるいはキャリアを用いた実験を進める準備は整っている。また、家兎を用いた実験についてはこれまでに多くの報告があり、実験系の確立に時間を要しないものと考えられる。したがって、平成28年度計画から持ち越す一部の実験についても並行して進めることが可能であり、次年度使用額はこれらの実験に対して使用する。

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公開日: 2018-01-16  

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