研究課題/領域番号 |
16K10343
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
香田 渉 金沢大学, 医学系, 准教授 (30401920)
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研究分担者 |
蒲田 敏文 金沢大学, 医学系, 教授 (00169806)
吉田 耕太郎 金沢大学, 医学系, 助教 (30645130)
南 哲弥 金沢大学, 附属病院, 准教授 (60436813)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 癌 / IVR / 血管透過性 / 微小環境 |
研究実績の概要 |
本研究では標的組織の微小循環系および血管透過性の制御による抗腫瘍効果の向上を最終目的としたトランスレーショナルリサーチを進めている。 今年度はラット腹部血行動態の評価のもとになる注入レートならびに注入量に関するデータの収集ならびに解析を行った。ラットの導入・維持麻酔はイソフルランによる吸入麻酔で行い、正確な循環動態評価を行うためニューロサイエンス社のパルスオキシメータを導入して術中モニタリングを行った。また、フローの定量化を行うことを念頭に、初年度に開発した小動物用細径マイクロカテーテル1.7Frを用い、300mgI/mLの造影剤をマイクロインジェクターを用いて注入した。まず、上腸間膜動脈、腹腔動脈、総肝動脈、固有肝動脈からそれぞれ注入量固定で様々に注入レートを変化させてflow rateの評価を行い、その結果をもとに決定した固定レートで容量を変化させて動脈末梢の描出の程度を評価した。近年、ラットでの血管造影を用いた基礎研究が増加してきているが、血管造影(DSA)の基礎的検討を行うことは意義が大きい。文献的にも詳細な記述のないラット肝動脈の血管構築について良好なDSA画像を用いて詳細な検討できること、適切な注入レートや容量を定めることでこれに続く血管透過性の変化を観察する実験の基礎データにもなる。 また、作成したDEN誘発肝癌ラットを用い、血管拡張薬(アルプロスタジル)や炭酸ガスの投与前後でのDSA画像の評価を開始した。さらに、染色剤Oil red-Oとリピオドールを混ぜた物質RIO(RIO;Red iodized oil)を使用し、リピオドールTACE後の組織切片上でのリピオドール分布の評価も開始した。 さらに光音響イメージングを用いた血管透過性ならびに組織灌流評価につなげるため、正常および障害組織における組織酸素分圧の変化を光音響イメージングにより観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラット血管造影における基礎的データの収集を行い、DSAによる循環動態評価における至適条件の設定を実施した。これをもとに、作成したDEN誘発肝癌ラットを用いた血管拡張薬(アルプロスタジル)や炭酸ガスの投与前後でのDSA画像の評価を開始し、予備的研究で一定の結果を得た。さらに、染色剤Oil red-Oとリピオドールを混ぜた物質RIO(RIO;Red iodized oil)を使用し、リピオドールTACE後の組織切片上でのリピオドール分布の評価も開始し、こちらでも予備的研究で一定の結果を得た。また、光音響イメージングによる生体組織のin vivoでの評価も進行している。こうした点で着実に動物実験の成果を得ているが、最終的な本研究まで至っていない点および予定していた粒子を用いた実験まで至っていない点から、(3)の「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
予備的研究を実施した血管拡張薬や炭酸ガスを用いたDSAでの血行動態評価を進め、本研究として正確なデータを得る。血管拡張薬はアルプロスタジルだけではなく、ヒスタミン、血小板活性化因子、エンドセリン受容体拮抗薬など他の薬剤も用いて実験を行う。また、DSA画像の検討と並行してevans blueやFITCデキストランを用いた組織での血管透過性の評価も行う。これらより腫瘍モデルおよび正常モデルにおける血管作動薬による血管透過性の変化について結論を得る。 さらにRIO(RIO;Red iodized oil)を用いたリピオドールTACE後のリピオドールの分布、あるいは高分子ミセル、ナノ粒子、マイクロ粒子、セルロースビーズ、蛍光ビーズなどの粒子を注入した際の粒子の分布についても本研究として正確なデータを収集し、血管作動性物質による塞栓物質や薬剤の分布の変化についても結論を得る。 in vivoでの画像評価として、DSA画像のみではなくCTを用いたCT angiographyによる評価を行うとともに、リピオドール-NBCAや硫酸バリウムなどの半液体~固体の物質を用いたex vivoでの動脈vasculature評価も行う予定である。また、光音響イメージングによる生体組織のin vivoでの評価も進め、実験系における評価方法として確立するとともに臨床応用の可能性についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)安定した動物腫瘍モデルの作成および麻酔下で正確な循環動態評価を行うための実験動物の術中管理とモニタリングに難渋したことから、当初、正確なデータ収集とその評価を行うことが困難であった。そのため、実験の精度を上げることに一定の時間を要し、本年度予定していた本実験を完了することができなかった。そのため、一部の実験を次年度に持ち越すこととなり、次年度使用額が生じた。 (使用計画)実験系がすでに確立されたため、本年度予定していた本実験は速やかに実施することが可能であり、次年度使用額についてはこれらの実験に使用する。また、当初より平成30年度に予定していた実験についても、これらの実験に継続・発展するものであり、並行して速やかに遂行していくことが可能であると考えている。
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