研究課題/領域番号 |
16K10346
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中本 裕士 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20360844)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ソマトスタチン受容体イメージング / DOTATOC / PET / オクトレオスキャン / 生理的集積 |
研究実績の概要 |
平成29年度は平成30年3月31日までに87人の患者に対し68Ga-DOTATOC-PET/CT検査を施行した。68Ge/68Ga ジェネレーター枯渇に伴う薬剤合成終了まで、腫瘍性骨軟化症のような稀少疾患の登録を続け、検査の新規登録受付終了後には最終診断を確定して論文化を進めていく。今年度は以下の2つの新規発表を行った。 ①68Ga-DOTATOC-PET/CT検査(以下、DOTATOCと略)と111In-Pentetreotide-SPECT/CT検査(以下、オクトレオスキャンと略)の臨床的有用性の比較。両検査を同時期に受けた20人の神経内分泌腫瘍患者(病期診断12人、再発診断6人、原発巣検索2人)に対して、両検査の診断精度を比較し、治療方針への影響を検討した。結果、DOTATOCでは96病変が同定されたのに対し、オクトレオスキャンでは69病変が同定され、病変単位のDOTATOC-PET/CT検査の優位性が明らかであった。一方で、治療方針への影響は2人に留まった。 ②DOTATOCの生理的集積に対するホルモン上昇の影響。DOTATOC-PET/CT検査では下垂体、副腎、脾臓などに生理的集積が見られるが、ホルモンが上昇していた場合に生理的集積が変化する可能性があるが、まとまった報告は皆無でエビデンスも確立されていない。ACTH、ガストリン、インスリンのそれぞれ高値群とホルモン上昇の無い群とを比較して、生理的集積への影響を調査した。結果、ACTHしている群では、ACTHを含むホルモン高値の無い群に比べて、下垂体、膵鉤部、副腎への生理的集積が有意に減少する傾向が見られたが、その他のホルモンでは特に影響は見られなかった。この新しい知見は、今後DOTATOC-PET/CTのようなソマトスタチン受容体イメージングをする際の留意事項として臨床的に役立つ可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度にも報告したが、薬剤合成に必須の68Ge/68Ga ジェネレーターの更新が半年ほど遅れて2017年春となったため、検査に必須の放射性薬剤の合成が当初の予定より半年間延長できるようになった。よって、もともと2017年12月末までとしていたデータ登録期間を延長することになり、さらなるデータの蓄積、症例増加に努めており、まもなく終了となる。画像診断で得られた所見の正否は、病理組織で確定するとは限らず、この場合には半年以上の経過観察を考慮して最終診断を確定することが多い。データ登録期間の延長とともに、最終診断の確定も遅れるが、確定した最終診断に基づいて、診断精度を算出するとともに、治療方針への影響を考察する。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の臨床研究の中心は、ヨーロッパの状況をみてもデータが限られている、神経内分泌腫瘍以外でのDOTATOC-PET/CT検査の臨床的有用性の検証である。まもなく新規データ登録が終了するため、検査後の追跡情報を元に症例ごとの最終診断を確定し、①腎細胞癌術後再発疑い、②腫瘍性骨軟化症の責任病巣検索、③異所性ACTH産生腫瘍疑い、のそれぞれの状況におけるソマトスタチン受容体イメージングにおけるDOTATOC-PET/CT検査の臨床的有用性をまとめ、論文化する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は論文発表が1つであったが、データがそろった今年度は、複数の論文作成および学会発表が予定されており、英文校正や出張旅費への支出が考慮される。
|