抗癌剤投与後抗癌剤の分布は投与方法,個人差および体内の環境により大きく変化するため適切な治療効果と副作用の低減の為,投与量や投与方法を最適化する必要がある.しかしながら薬剤投与後に非侵襲的に標的臓器や非標的臓器の抗癌剤濃度をモニタリングする方法は存在しない.本研究はdual Energy CTでの体内での非侵襲的な抗癌剤分布測定を実用化するため、CTのprojection raw dataによる電子密度解析およびspectral HU解析を用いた薬剤の検出方法を確立することにある.本研究の実績としては以下の2つである.1.Dual energy CTを用いた水溶液抗癌剤の弁別能を判定した.2.Dual energy CTを用いた個別の抗癌剤の濃度の組織内定量方法を検討した. 1.各種抗癌剤(ジェムザール,マイトマイシンC,5FU,シスプラチン)および,食塩水,ショ糖水溶液,アルブミンを用い適切な濃度に設定した水溶液を作製した.その上で,dual energy CTによる実効原子番号解析,電子密度解析,CT-KeVグラフ解析を行いそれぞれの特性カーブの違いを探索し,抗癌剤弁別能の可能性を探索した. 2.水溶液中の血漿中に様々な濃度で溶解したジェムザール,マイトマイシンC,5FU,シスプラチン水溶液,生理食塩水の電子密度,原子番号解析,CT-KeVグラフ解析を施行し,濃度に応じた特性曲線の有無を検討した.CT-KeVグラフ解析において生理食塩水,シスプラチン水溶液,5FUにおいて濃度に応じたスペクトラルカーブに変化が見られ,組織内の濃度定量可能性が示唆された.2017年度ではこれまでの検討で最も分別能が容易で濃度に応じた電子密度解析,CT-KeVグラフの特性曲線に変化が見られたシスプラチンを用いた組織内定量を可能にするため,多様な濃度のシスプラチンに基づく濃度勾配曲線を作製した.
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