研究課題/領域番号 |
16K10367
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研究機関 | 岐阜医療科学大学 |
研究代表者 |
櫻井 智徳 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 教授 (90400142)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 静止期細胞 / 幹細胞 / 細胞外マトリックス / 速筋 / 遅筋 / C2C12細胞 / 筋管形成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的の1 つは筋肉幹細胞が放射線照射によって受ける影響を体内での状態に即して解明することであり、もう1 つは筋肉の内分泌器官としての機能に対する放射線照射の影響を解明することである。平成28年度は、前者の目的に対し2つ、後者の目的に対して1つのアプローチを実施した。 筋肉幹細胞は生体内では静止期にあるものが多く、筋肉幹細胞の静止期での被ばくに対する影響評価を試みたが、(1) Sachidanandanらによる2002年の論文の方法では論文通りの経過を辿らないこと、(2) 静止期への方法自体が放射線影響を生む可能性があること、(3) 分化誘導評価だけでは不十分なことが明らかになった。(1)と(2)の結果から、29年度以降実験方法を変更する。(3)の結果から、評価方法を追加する予定である。 筋肉幹細胞は生体内では細胞外マトリックスに接着した状態で存在すると考えられている。今年度は、Ⅰ型コラーゲンの存在が、X線照射2、4 Gyによる筋管形成の障害を軽減することを確認した。しかしながら、この原因が、(a) X線照射による幹細胞の障害を軽減しているのか、(b) X線照射された幹細胞からの筋管形成障害を軽減しているのか、(a)、(b)両方に効いているのかは不明瞭であった。29年度は、X線照射後早い時期からのサンプリング、遺伝子発現も検討し、これらを明らかにする予定である。 筋肉には速筋と遅筋があり、加齢により速筋と遅筋の比率が変化する。放射線照射の影響には、加齢に類似した点も見られるため、筋肉の内分泌器官としての機能に対する放射線照射の影響を解明する予備検討として、X線照射された幹細胞から形成される筋管細胞の速筋、遅筋比率への影響を評価したところ、速筋の減少と遅筋の減少が示唆された。29年度は、再現性の確認と、筋管細胞へのX線照射への影響に評価を拡張する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
静止期を形成する方法が事前に期待していたよりも応用が利かず、別な方法を検討する必要に迫られたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に引き続き、筋肉幹細胞が生体内では静止期にあること、細胞外マトリックスに接着していることを実験系に反映して、筋肉幹細胞の放射線感受性を評価する。 平成28年度の検討を受け、静止期の作製方法は、筋肉幹細胞特異的発現遺伝子の導入等を検討する方法に変更する。細胞外マトリックスに関しては、平成28年度に影響が確認されているので、平成29年度にはそのカニズムを明らかにしていく。 筋肉の内分泌期器官としての役割に対する放射線の影響評価に関しては、平成28年度に放射線照射により、筋肉の速筋と遅筋の構成比率が変化する可能性が示唆されたので、平成29年度は再現性を確認し、さらに、筋肉からの分泌物に対する放射線影響の準備も整ったので、検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時には、インキュベータの購入による研究速度促進を企画していたが、研究室の環境が変化し、インキュベータをほぼ独占状態で使用できるようになったので購入を控えた。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の主力装置であるリアルタイムPCR装置が古くなり、サポート期間も終了してしまったので、インキュベータに代わり、リアルタイムPCR装置の購入を計画している。しかしながら、ELISA測定にかかる費用が予定以上に高価になる可能性があり、研究進行状況と予算残額、装置の状況を良く検討して購入する予定である。
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