研究課題/領域番号 |
16K10367
|
研究機関 | 岐阜医療科学大学 |
研究代表者 |
櫻井 智徳 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 教授 (90400142)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | C2C12細胞 / 筋管形成阻害 / 細胞遊走 / マイトカイン / 速筋 / 遅筋 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は2つある。1つは、筋肉再生の起源となる筋肉幹細胞(筋衛星細胞と称される)への放射線影響を、体内での状況を反映させて評価することである。もう1つは、新しく発見された筋肉の内分泌機能に対する放射線影響を評価することである。 筋肉幹細胞への放射線影響に関して、今年度は、筋肉幹細胞が生体内で比較的自由に遊走可能な点に焦点を当てた。その結果、4 GyのX線照射で約20%の遊走が阻害される結果を得た。筋肉幹細胞の遊走能力が阻害されると、再生が必要な部位での幹細胞数が不足し、筋形成の阻害に至ると考えられる。放射線による筋形成阻害に対し、幹細胞の局所注入(移植)が有効な可能性を示唆している。 筋肉の内分泌機能に対する放射線影響に関し、今年度は、CCL2、CCL7、CCL8へのX線照射の影響をmRNA発現量によって評価した。その結果、4 Gyで約25%減少する結果を得た。放射線照射の影響は、放射線照射部位のみに顕著に表れると捉えられているが、今回の結果は、筋肉から分泌される生理活性物質への影響を介して、照射部位以外にも影響が現れる可能性を示唆している。 今年度は、さらに、筋肉の速筋・遅筋間のタイプ変換の観点からも放射線影響を評価した。4 Gyの放射線照射によって、速筋と遅筋を制御しているmRNAの発現量に変化がみられる結果を得た。速筋と遅筋とでは、瞬発力、持続性、有酸素代謝か無酸素代謝かが異なる。速筋と遅筋は相互に変換することが知られ、筋肉の質と量が寿命に影響すると言われている。放射線照射により、速筋と遅筋の変換が生じているのか、どちらかが選択的に影響を受けているのか、発生機序を検討していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度4月に入試広報部長を拝命し、入試問題作成プロセスを全て取り仕切る実務に従事することになった。さらに、本年度は、大学初の大学入試センター試験主担当校としての実施を企画、運営することになった。大学入試センター試験監督未経験教員の教育と当日の陣頭指揮のため、監督要領と実施要領を詳細に熟読・理解する業務が発生し、研究エフォートが大幅に減少、進捗に遅れが生じてしまった。来年度は、今年度の入試広報部長としての経験を業務に活かせるので、研究のエフォートは上げられる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
2つある研究目的のうちの1つ、筋肉再生の起源となる、筋肉幹細胞への放射線影響を、体内での状況を反映させて評価する研究については、今年度、遊走能力への放射線影響がみられたため、細胞遊走に関連する遺伝子、細胞内シグナル伝達への影響を評価し、発生機序を明らかにしていく。細胞外マトリックスの存在を実験系に反映する準備も整ったので、来年度実験を進めていく。筋肉幹細胞は、通常、細胞周期休止状態にあること実験系への反映は、既報の方法では上手くいかないことが昨年度の検討で明らかになっているため、遺伝子導入等の検討を開始する。 もう1つの目的である、筋肉の内分泌機能に対する放射線影響を評価する研究については、今年度放射線影響がみられたCCL2、CCL7、CCL8に加え、刺激物質に対する分泌応答への影響も評価することで、機能への放射線影響も評価する。TNF-α刺激によるIL-6等の分泌評価を予定している。今年度、mRNAの発現量に放射線照射の影響がみられた速筋、遅筋の形成状況についても、放射線照射影響の発生機序を検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、大学の入試業務に関する負担が格段に増加したことで研究に対するエフォートが低下してしまい、今年度予定していた研究を十分進捗できなかったからである。研究が予定より遅れている分、予算執行額が少なく、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は今年度予算額に相当し、1年分の遅れが生じている状である。平成30年度になり、昨年度の入試広報部長としての経験が活かせており、研究エフォートを当初予定通り確保することができるようになった。研究期間を1年延長することで、当初予算に応じた研究成果を上げることが可能と予測している。平成30年度終了の計画を、平成31年度終了に変更し、平成30年度に平成29年度計画の完遂、平成31年度に平成30年度計画の完遂を計画している。
|