研究課題/領域番号 |
16K10379
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 徳雄 北海道大学, 大学病院, 助教 (80572495)
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研究分担者 |
Tha KhinKhin 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (20451445)
サザランド ケネス・リー 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (70643914)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 陽子線治療 / 放射線治療 / 肝癌 / Radiomics |
研究実績の概要 |
(1) 肝癌患者における治療前画像データ情報と再発の関連性の解析 当該年度では2015年1月から2017年3月までの期間に陽子線治療を行った局所再発に関して調査を行ったが、局所再発の診断が確定した症例は1例であった。当該年度の前半においては肝細胞癌に対する陽子線治療成績に関するレビューを行い、Medical Science Digest誌(2017年6月臨時増刊号)で発表した。 (2) 線量増加シミュレーションプランニングの施行 陽子線治療後の肝実質変化を陽子線治療計画の段階で予測できるように、肝癌への陽子線治療前後で取得したMRI画像データを元に10例11病変を解析し、第59回米国放射線腫瘍学会で発表した(Analysis of Threshold Doses for Radiation Induced Liver Parenchymal Changes on MRI After Real-Time-Image Gated Spot-Scanning Proton Beam Therapy of Hepatocellular Carcinoma. 2017年9月24日-27日サンディエゴ、米国)。10例中肝硬変合併は5例であった。GTV体積は平均33 ± 37ml。線量・回数は5病変で76Gy(RBE)/20回、3病変で72.6Gy(RBE)/22回、3病変で66Gy(RBE)/10回が用いられた。陽子線治療3か月後のEOB-MRI肝細胞相での陽子線照射後の肝実質の変化(focal area of low signal intensity, FLSI)を計測し、α/β = 3、1回2Gy(RBE)換算でFLSIを生じる閾値線量を計算した。平均FLSI体積は143 ± 108ml。閾値線量は全体で36.9 ± 11.0Gy(RBE)、肝硬変群で平均34.3Gy(RBE)、非肝硬変群で平均39.5Gy(RBE)であった。非肝硬変群の閾値線量は肝硬変群よりも高い傾向にあったが、2群間に統計学的な有意差は認められなかった。閾値線量の推定は陽子線治療計画の際に肝障害発生の予測に有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
(1) 当初、陽子線治療を行う肝細胞癌患者数を20名程度を予想していたが、2017年度は15名と予想よりも少なかった。 (2) 当該年度では2015年1月から2017年3月までの期間に陽子線治療を行った治療成績に関して解析を行う予定であったが、陽子線治療の局所再発が1例と少なかったのと経過観察期間が短いこともあり再発例が少なく十分な解析が行えなかった。 (3) 当施設では新たな低酸素イメージング製剤であるFDiFAを開発し、2016年度にFDiFA-PETのphase1試験が終了となった。肝癌を含め悪性腫瘍患者に対するFDiFA-PETの臨床研究は2017年度後半に開始となったが、適格条件を満たし同意の得られた症例は1例であった。進捗状況としては当初の計画よりも遅れていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度はFDiFA-PETPET画像が得られた症例は1例であったが、引き続きFDiFA-PET画像データを蓄積していく予定である。治療前後でのCTやMRI画像データは蓄積されており、引き続きデータを蓄積していく。陽子線治療成績に関しては、2018年度では経過観察期間が延び、蓄積症例数も増えるので解析を解析を進めていくとともに、2017年度に学会発表した陽子線治療後の肝実質変化に関して症例を追加し、非剛体イメージフュージョンも用いて追加解析を行っていく。 また、引き続きCTやMRI画像データをもとにRadiomics 解析に必要な情報抽出を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 2017年度はPETの薬剤費用に未使用分が発生した。また、2017年度も当初の陽子線治療患者数の予想(20名) よりも実際の患者数(15名)が少なかったため、既存PCでも処理できるデータ量であった。 (使用計画) 2018年度では、PET製剤の購入費に使用する予定である。データ量が増えた段階でPCを購入する予定である。
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