3年間の調査および研究の結果、放射線治療後の晩期有害事象のうちで高気圧酸素療法が最も有用である疾病の一つに、放射線治療後の腸管潰瘍、特に子宮癌などに対して小線源治療を併用して高線量が投与された結果生じる直腸潰瘍があると考えられた。そのため、最終年度である本年度は、その病態及び高気圧酸素療法が奏功するメカニズムの推測などを含めた報告を、書籍紙面上で行った。これは技術情報協会で出版の「がん治療でおこる副作用・合併症の治療法と薬剤開発」という書籍名にて2018年8月31日に刊行された。 学術集会における発表についてはテーマや時期がうまく合致せず、発表の機会が得られなかったが、研究会や院内勉強会レベルでの発表では最終年度だけでも2回ほどの発表機会があり、高気圧酸素療法の有用性を広めることができたと考えている。 また、当施設では以前は治療開始依頼が紙ベースで行われており、高気圧酸素治療実施記録も病院情報システム上には反映されていない状況であった。本研究におけるデータベース構築準備という点において、副次的に病院情報システム上でオーダーができるようなシステムが構築され、また、実施記録も病院情報システム上で入力されるようになった一面がある。当施設での高気圧酸素療法へのアクセスが容易になったという点で、大きな進歩であると考えられる。 さらに、2018年の診療報酬点数改正にて、放射線治療後の晩期有害事象を含む慢性疾患に対する高気圧酸素療法の保険点数が、200点/日から3000点/日に大幅に増点となった。すでに、2019年の医学放射線学会総会でも放射線治療部門の教育講演にて高気圧酸素療法が取り上げられるなど、本治療法は今後注目を浴び、さらなる研究の継続が必要となる可能性が感じられた。
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