GL261-mKOを左大腿皮下へ移植し、10日後にX線(20Gy)を照射し、照射24日後に同じ腫瘍細胞を頭蓋内に移植したマウスモデルを作製した。腫瘍測定はIVISにて行った。このモデル16匹のうち8匹では照射後に大腿皮下腫瘍の増殖が抑制され(局所コントロール群)、残りの8匹では増殖の遅延はあったが、その後急激に再増殖した(局所再発群)。頭蓋内に移植した腫瘍細胞は、局所コントロール群では完全に拒絶され、再発群ではすべて生着し急速に増殖した。16匹のマウスの生存期間の中央値(MST)は63日で脳腫瘍モデルの49日と比べ、有意な生存期間の延長が見られた。さらに局所コントロール群と再発群に分けると、局所コントロール群は全例長期生存したが、再発群ではMSTは38日で脳腫瘍モデルよりも有意に短縮した。エリスポットにより脾臓細胞からのIFN-γ産生を確認すると、局所コントロール群では産生が認められ、その量は抗原刺激によって有意に増加した。さらに抗原刺激時のIFN-γ産生量を局所再発群および脳腫瘍モデルと比較すると有意に高かった。またIFN-γの産生は腫瘍移植後に増加し、X線照射後一時的に減少した。その後抗原刺激の有無にかかわらず、産生量は再び増加した。X線非照射群におけるIFN-γ産生は照射群に比べ低い値を示した。当該モデルの局所コントロール群では頭蓋内腫瘍へのCD8陽性細胞の浸潤とミクログリアの集積傾向が認められたが、局所再発群と脳腫瘍モデルでは殆ど認められなかった。 今回の検討で、末梢の腫瘍に対する局所的放射線照射により、局所コントロールが得られた場合は、頭蓋内の腫瘍へ防護的な抗腫瘍免疫反応が誘導され、脳腫瘍にもアブスコパル効果が発現する事が明らかとなった。また、放射線照射により局所の腫瘍が制御されるか否かが、全身的な腫瘍免疫反応のバランスに大きく影響することが示唆された。
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