研究課題/領域番号 |
16K10390
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
溝脇 尚志 京都大学, 医学研究科, 教授 (90314210)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 強度変調放射線治療 / 画像誘導放射線治療 / 新規照射法 / Dynamic WaveArc |
研究実績の概要 |
DWA-VMAT 照射機能の評価を行い、前立腺癌に対する局所照射の治療計画プロトコールを確立して臨床適用を開始した。本年度末の時点までに、DWA-VMAT法ですべての前立腺癌局所照射例を加療する体制を確立した。現在までのところ、全症例において従前と同等以上の良好な線量分布が実現可能であることを確認した。さらに、総照射時間は約90秒と、従来法の約10分間と比較して大幅な時間短縮を実現した。 DWA-VMAT照射における機械的位置精度を,マルチリーフコリメータ位置,ガントリ位置,リング位置,の各データを用い、X線出力をEPIDとログファイルを用いて検証する方法を開発・確立した。本方法は、現在論文投稿準備中である。また、臨床用プランのQA方法を半導体検出器を用いて行い、従前のVMAT法と同等の精度で照射されていることを、すべての臨床例において検証・確認した。 54Gy/15分割の寡分割定位IMRT治療計画プロトコールをベースとし、高リスク前立腺癌へ対応するために主腫瘍部分に対しては57Gy15分割の線量増加を行う同時ブーストIMRTプランが最も妥当であることを見出した。次いで、この線量分割でのSIB DWA- -VMAT治療計画プロトコール作成のため、代表的な7例の患者データをもとに治療計画研究を行い、プロトコール策定に向けた実行可能性と問題点を検討した。その結果、多くの症例において概ね54Gy/15分割の寡分割定位IMRT治療計画プロトコールの線量制約順守が可能であったが、ブースト照射の対象となる主腫瘍が大きい場合には、線量増加に伴い直腸やターゲットの線量制約の緩和が必要であるという知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初計画であった以下の2つの目標をほぼ達成できた。 1つは、54Gy/15 分割の寡分割定位IMRT 治療計画プロトコールをベースとし、高リスク前立腺癌へ対応するために主腫瘍部分に線量増加を行い、かつ、3 分以内に照射終了可能な寡分割SIB DWA-VMAT プランの治療計画プロトコールの策定であったが、本年度実施の治療計画研究において、治療計画プロトコールの大枠を定めることができた。 もう一つは、DWA-VMAT 機能の開発と前立腺癌への臨床展開であるが、本年度中に開発を完了し、前立腺癌に対する通常分割照射における臨床適応を開始し、本年度末には、全症例をDWA-VMATで加療する体制を整えた。 また、DWA-VMAT照射法の医学物理的QA/QC手法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って、寡分割SIB DWA-VMAT 治療計画プロトコールを確立し、新たに放射線外部照射療法を行う高リスク前立腺癌患者に対して完成した治療計画プロトコールを仮想的に適用し、策定した治療計画プロトコールの妥当性検証を行う。同時に、実臨床に用いたVMAT プランと試験的に立案した寡分割SIB DWA-VMAT プランとの比較を行い、腫瘍やリスク臓器線量において、通常のIMRT/VMAT プランに対するSIB DWA-VMAT プランの優位性を検証する。 同時に、上記で立案したSIB DWA-VMAT プランを実機にてファントムに対する照射実験や線量計算シミュレーションを行い、医学物理的な精度検証を行う。また、策定したプロトコールを使用して行うパイロット臨床試験計画を立案し、京都大学医の倫理委員会の承認す得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
DWA-VMAT照射方法の物理的QA/QCのために、Gafchromic film EBT3を計上していたが、使用期限を有する在庫分を優先して使用したことと、QA/QC手段として円形の半導体検出器を使用する方がQA/QC時間を大幅に短縮可能であることを見出しその手法を確立したため、当初予定と比較してフィルム使用量が減少したため。
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次年度使用額の使用計画 |
フィルム使用量が予定より減少した一方、半導体測定結果の解析や治療計画研究において当初計画よりマンパワーが必要であることが判明したため、来年度以降はこれらの作業の補助員の雇用時間数を当初予定より増やす予定である。したがって、繰り越し分は翌年度分と合わせて、当初の研究計画に沿って使用する見込みである。
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