研究課題/領域番号 |
16K10394
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉田 賢史 神戸大学, 医学部附属病院, 特命講師 (80351906)
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研究分担者 |
宮脇 大輔 神戸大学, 医学研究科, 助教 (30546502)
高橋 哲 神戸大学, 医学部附属病院, 特命教授 (40311758)
西川 遼 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (80736835)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 画像誘導小線源治療 / 放射線治療学 |
研究実績の概要 |
日本ではCT を用いた画像誘導小線源治療(Image guided brachytherapy: IGBT)が子宮頸癌治療における主流である。しかし組織の描出能においては圧倒的にMRI が優れており、今後欧米と同様にMRI を導入する施設が増加する可能性が高い。当該施設では昨年10月より全例に対してMRI ベースのIGBT を始めており、日本における先駆的な施設といえる。本研究の目的は、腫瘍の活性を反映する拡散協調画像 (Diffusion weighted image: DWI)における定量的数値であるApparent diffusion coefficient (ADC 値)に着目し、小線源治療中のADC 値の経時的変化を計測しその意義を検討することに加え、より正確なADC 値の変化を把し、治療計画装置との融合を可能とするソフトウェアを開発することである。その第一段階として26例の子宮頸癌患者におけるMRIベースのIGBT中のHigh risk clinical target volume (HRCTV)のADCの変化をヒストグラムを用いて解析、その経時的変化に関する検討を行った。これに関しては有意な変化は認められなかった (第4回がんプロ国際シンポジウム)。また、Gross Tumor volume (GTV)のADC値と初回IGBT直前のHRCTVのADC値を、ヒストグラムから得られる平均値を用いて比較した。全症例でADCの平均値は上昇、HRCTV / CTVの平均は1.49であり、spearman相関係数0.48で正の相関性を認めた。再発症例は1例が腺癌、HRCTV / CTVが全症例中最も低い症例であった。もう1例は扁平上皮癌でGTV-ADC、HRCTV-ADCともに極めて低値を示す症例であった(2016年度日本医学放射線学会関西地方会、日本放射線腫瘍学会)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現段階では、IGBT中のADC値に関しては、ヒストグラムにおける平均値、中央値、歪度、尖度のいずれにおいても有意な変化を認めていない。これに関しては様々な要因の影響が示唆されるが、まずアプリケーターの影響の有効な排除法についての確立が困難であることが挙げられる。また、IGBT時のMRIはすべて同一機種で施行することが可能であるが、治療前は機種が異なることもしばしばである。ADC値はMRIの機種によって異なることが知られており、これが現段階での結果に影響していることも否定できない。このような機種間でのADC値の違いをどのように補正するかに関しての検討も現在研究段階にある。さらに病期や組織型等の臨床的要因にもADCは影響を受けるため、こういった要因に関しても対策を一つ一つ行いながら研究を進めつつあるという状況である。当面はこのような問題の是正を行っていくという状態が続く可能性もあると思われる。よって、研究は進行しているが、やや遅れているというのが現状であるといえる。しかし、できるだけすみやかに次の段階(ソフトウェア開発)に入る予定としてる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のごとく、研究は様々な問題に関しての対応を行いつつ進められているというのが現状である。最も大きな障害はやはりアプリケーターの影響といえる。これをまず解決することが今後の研究の進捗に大きく関係するといえる。これに関しては今後も継続的に研究を続けるが、100%影響なく解析可能なのが治療開始前とIGBT直前のMRIを用いたADC値の比較検討 (GTV vs HRCTV)である。すでに初期検討として発表した通り、全症例でADCの平均値は上昇、HRCTV / CTVの平均は1.49、spearman相関係数0.48で正の相関性を認めている。再発症例はこの相関から逸脱傾向にあることから、重要な臨床的知見が得られる可能性もあると考えられる。よって今後さらに症例を収集しつつ検討を進める価値のあるものといえる。 今後はアプリケーターの影響を排除することを重要課題としつつ、当初の目的であったIGBT中の変化に加え、治療前からIGBT直前にかけての変化を加えた両面から研究を進め、最終的に有益なソフトウェアの開発につなげてゆく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はMRI ベースIGBT 開始後から、研究期間開始までに蓄積された症例を用い、全てについてIGBT 期間中のターゲット内(HRCTV, GTV)のADC 変化についてヒストグラム解析を中心とした検討を行うことがまず第一であり、それに次いでソフトウェア開発に移行するという計画あった。研究開始にあたりADC は様々な要素に影響を受けることはわかっており、それらについて詳細に把握してどのようにすればそれらの影響を最小化することができるかを検討することも本研究を進めるにおいて重要課題であった。しかしこちらをスムーズに解決できておらず、現段階でソフトウェアの解決にたどり着いていないことが大きな要因であると考えられる。。
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次年度使用額の使用計画 |
解決すべき項目は抽出されており(アプリケーターの影響の排除等)、これらを積極的に解決、ソフトウェア開発にできるだけ早期に移行する。これを遂行するため、初年度には見送られた研究助手の雇用を行う。さらにより積極的に本研究に関する調査、データ収集を行い、随時その研究成果を国内・国際学会および論文で発表してゆく。
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