研究課題/領域番号 |
16K10395
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中山 雅央 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (60582004)
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研究分担者 |
江島 泰生 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (70423233)
吉田 賢史 神戸大学, 医学部附属病院, 特命講師 (80351906)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射線治療 / ナノ粒子 / 放射線増感 / 活性酸素種 / チタン酸化物 |
研究実績の概要 |
本研究は過酸化チタンナノ粒子を用いた新しい放射線増感治療法の開発と臨床応用するための基盤の確立を目的とする。これまでの研究から過酸化チタンナノ粒子はX線照射によって活性酸素種(ROS; Reactive Oxygen Species)を生成する特性を持っており、細胞・動物実験においてX線照射との併用でX線照射単独と比べて十分な放射線増感効果が得られることを示した。本研究計画では臨床応用に向けてこの効果をさらに展開させるため、腫瘍ターゲティング性能を付加させた過酸化チタンナノ粒子の増感効果の評価、粒子線など種々の放射線照射下における増感効果の検討、他の金属ナノ粒子との増感効果の比較評価を行う。 本年度は抗体修飾ナノ粒子を作成し動物実験でその増感効果と体内分布を調べた。膵癌細胞株を移植した担がんマウスにEGFR抗体修飾過酸化チタンナノ粒子を尾静脈から投与し一定時間後にX線照射を行ったところ、処置後の腫瘍体積の変化では抗体未修飾の過酸化チタンナノ粒子と比べて有意な差は見られなかった。ナノ粒子投与後の体内分布を調べた結果、正常臓器では肝臓に最も多く集積しており、腫瘍には一部集積が見られたが時間とともに大きく減少していることがわかった。腫瘍へのナノ粒子の集積の向上と投与からX線照射までの時間の検討が必要である。 一方で過酸化チタンナノ粒子の特性評価として、増感効果をもつナノ粒子として広く研究されている金ナノ粒子との比較試験を行った。粒子のみの実験系でX線を照射したところ、最も酸化力が強いROSであるヒドロキシラジカルは過酸化チタンナノ粒子より金ナノ粒子の方が多く生成していることがわかった。この結果から過酸化チタンナノ粒子の抗腫瘍効果には過酸化水素やスーパーオキシドアニオンといった他のROSの関与が考えられ、今後は生成されるROSの種類の同定を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究計画に従い、抗体修飾ナノ粒子を作成し動物実験でその増感効果と体内分布を調べた。詳細な組織学的評価等はまだ実施できておらず、これらは次年度以降に遂行する。また金ナノ粒子との比較評価の第一段階としてX線照射により生成されるROSの定量比較を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い実験項目を遂行する。抗体修飾ナノ粒子を用いた検証において抗体未修飾ナノ粒子と比べて有意な増感効果が得られなかったため、これに関しては条件の変更など今後検討が必要である。並行して過酸化チタンナノ粒子に対して粒子線や放射光といったX線以外の放射線照射によるROS生成の評価やそこから生成されるROSの種類の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額はごく僅かであり、適切な用途がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は僅かであるため、計画の大きな変更予定はない。
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