研究課題
本研究は、過酸化チタンナノ粒子(TiOxNPs)を用いた新しい放射線増感治療法の開発と臨床応用するための基盤の確立を目的とする。本年度は昨年度に引き続き、広く研究されている金ナノ粒子と比較して生成される活性酸素種(ROS; Reactive Oxygen Species)量およびその種類を評価した。ナノ粒子のみの実験系では、X線照射によりTiOxNPsからヒドロキシラジカルの生成が確認されたが、その生成量は金ナノ粒子と比べて有意に少なかった。一方で、過酸化水素(H2O2)に関しては金ナノ粒子からはその生成は確認されず、TiOxNPsではX線照射の有無に関わらずH2O2が生成されていることがわかった。膵がん細胞株を用いたin vitro実験においても同様にTiOxNPsではナノ粒子濃度に依存した細胞内でのH2O2の増大がみられた。コロニーアッセイ法による細胞生存率の評価では、金ナノ粒子よりTiOxNPs とX線照射の併用群が最も大きな放射線増感効果が示した。さらにマウスを用いた動物実験ではTiOxNPs とX線照射の併用群で最も大きい抗腫瘍効果が得られたとともに、腫瘍内でのカタラーゼおよびグルタチオンの有意な増加を確認した。これらのことからH2O2が放射線増感効果に大きく影響していることが示唆される。放射線増感効果の評価とともにナノ粒子の腫瘍ターゲティングを評価するためにナノ粒子の体内でのイメージ化が課題として挙げられる。そこでTiOxNPsの原料であり、同じ結晶構造をもつ二酸化チタンナノ粒子(TiO2NPs)を用いてコンピューター断層撮影(CT)および核磁気共鳴画像法(MRI)でのイメージングを検討した。その結果、MRIのT2強調画像においてTiO2NPs濃度に応じたコントラストの差が見られた。今後ナノ粒子の腫瘍集積を評価するツールとして利用できることが示唆される。
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