研究課題
今年度も放射線防護剤シードであるp53調節剤5-クロロ-8-キノリノール(5CHQ)の作用機構解析について研究を進めた。担がんマウスを用いた5CHQおよびその類縁体による腫瘍制御率の向上活性を検討する前段階として、マウスに移植可能でp53遺伝子型のみ異なる腫瘍細胞株を作製し、マウス生着後の平均生存日数等の基礎データを取得した。また、遺伝子発現の網羅的解析では、次世代シーケンサーを用いたmRNA-Seqにより、照射マウス腸上皮の5CHQによる遺伝子発現変化の網羅的解析を行った結果、溶媒投与後に24 GyのX線を腹部照射した対照マウスに比べ、5CHQ投与腹部照射マウスでは、腸上皮幹細胞の分裂を促進する遺伝子や、腸上皮幹細胞の活性を上方制御する複数の遺伝子の発現が上昇していることが明らかとなった。5CHQによるp53転写制御作用の構造化学的基盤を解明する目的で進めている5CHQ-p53-標的DNA三者複合体の結晶構造解析では、p53のDNA結合ドメイン発現ベクターを作製し、精製方法の大枠を決定した。さらに、p53阻害剤としてバナデート、p53調節剤として5CHQを投与し、マウス個体レベルでの重粒子放射線防護効果も検討した。骨髄死相当線量の炭素線全身照射試験では、溶媒投与群に比べバナデート投与群では有意な防護効果が認められたが、腸死相当線量の炭素線を腹部照射したマウスでは、何れの照射線量群(12-15 Gy)においてもバナデートの防護効果が認められなかった。また、鉄線全身照射による骨髄障害に対しては、線量のわずかな増加でバナデートの防護効果は失われてしまうが、p53阻害によってある程度軽減できることが明らかとなった。もう一方の5CHQの活性評価も進行中である。
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The Journal of Medical Investigation
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