研究課題
本研究では食道扁平上皮癌に対する化学放射線療法(CRT)再発の原因を明らかにすることを目的とする。CRT耐性クローンの特徴を捉えるために、一腫瘍内における遺伝子異常の不均一な分布「腫瘍内不均一性」に着目し、研究を開始した。症例選定のために食道扁平上皮癌のうち根治的CRT(放射線照射50Gy以上の線量投与+シスプラチン+5-FU)を完遂した症例の経過観察を行った。治療後に一旦臨床的完全寛解に至り、その後食道原発巣へ局所再発を来した5症例を選定し、本研究の解析対象とした。腫瘍内の一部にのみ存在する遺伝子異常を捉えるために、同一患者由来の食道癌原発巣とCRT後局所再発巣をマルチサンプリングし、腫瘍細胞からDNAおよびRNAを抽出した。腫瘍内の各領域より抽出したゲノムDNAは、Agilent社製のライブラリを用いてサンプル調整を行い、次世代シークエンサー(HiSeq2500)によるエキソーム(SureSelect Human All Exon V5)を施行した。さらに同一検体由来のRNAを用いてRNAシークエンス(SureSelect Strand Specific RNA)も施行した。得られた膨大なゲノムデータを解析し、遺伝子変異やゲノムコピー数異常について腫瘍内の各領域における異常を検出したところ、再発病変は未治療時と異なるゲノムプロファイルを示していた。再発に至る過程で、新たなゲノム異常を獲得したり、マイナークローンが治療という選択圧によって優勢となっているとかんがえられる。一方、再発腫瘍には未治療時から遺残するゲノム異常もあり、治療耐性クローンが有する内因性の異常と考えられた。再発に至る耐性クローンの起源や特徴的なゲノム異常を明らかにした。引き続き、トランスクリプトームレベルでも解析を行い、CRT耐性クローンが有する遺伝子異常の特徴を明らかにする予定である。
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