研究課題/領域番号 |
16K10400
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
杉江 愛生 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (80509258)
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研究分担者 |
岩田 宏満 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (40611588)
荻野 浩幸 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 高度医療教育研究センター教授 (60315885)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射線ホルミシス / 適応応答 / 低線量率長時間放射線照射 / 腫瘍生着実験 / DNA二本鎖切断(DSB) / γH2AX抗体染色 |
研究実績の概要 |
研究目的・計画に記載したマウス移植腫瘍における放射線抵抗性誘導の評価については陽子線を除く領域については大部分の実験を完了し、学会発表を行い、この部分に関しては論文執筆が完了し関連学会誌に掲載された。超低線量率および低線量率長時間ガンマ線照射下にあるBalb/cマウスに対して、それぞれ大腿部皮下にEMT6マウス乳腺肉腫細胞を移植して生着率等を検討する実験では、超低線量率にて生着率の低下が確認され、放射線ホルミシス・適応応答の関与が示唆された。ただ低線量率では生着率の低下は確認されず、本現象に関しては超低線量率のほうが至適線量に近いと推測された。また、研究目的・計画に記載した超低線量率および低線量率長時間ガンマ線照射によるsingle cellにおける放射線抵抗性誘導の評価については、X線についてはおおむね実験を完了し、学会発表を行い、この領域に関しては論文執筆が完了し関連学会誌に投稿中であり近日中に掲載されるものと考えられる。超低線量率および低線量率長時間ガンマ線照射下にあるHSGヒト唾液腺腫瘍細胞に対して放射線治療を想定した一定線量(2-8Gy)の照射を施行して放射線抵抗性を検討する実験では、超低線量率・低線量率ともに放射線ホルミシス・適応応答による放射線抵抗性の誘導が示唆された。またγH2AX抗体染色を用いた検討では本現象の一因としてDNA二本鎖切断(DSB)の修復が増強する機序の存在が示唆された。放射線抵抗性は低線量率よりも超低線量率でより強く、本現象に関しても超低線量率のほうが至適線量に近いと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該研究の残りの実験の大部分を予定している陽子線治療施設では、陽子線治療装置は臨床使用だけでなく他の基礎的検討も多くなされており、限られた照射時間のなかでは実験の進行に限界がある。さらに一昨年度からは慢性的な陽子線治療施設および当大学の人員不足(特に昨年度は研究代表者の業務を主に分担していた同僚が出産休暇・育児休暇を取得したことに伴い研究代表者が他業務にて極めて多忙になっている状態である)による臨床業務の増加と研究時間の制限も重なっており、当該研究も順番を待って実験を施行していく予定となっているが、混雑と時間制限と人員不足のため予定より進行は遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、当該研究につき陽子線治療施設・当大学での打ち合わせやメール会議を重ねつつ、陽子線を使用する各種予備実験・関連実験を施行して、spheroid cellの亜致死損傷の回復(SLDR)および潜在致死損傷の回復(PLDR)を評価検討していく。また、生細胞タイムラプスイメージングシステムIncucyteを用いた陽子線照射後とX線照射後のspheroidの経時的変化の観察と比較検討や、γH2AX染色・トリパンブルーアッセイ等を用いたアポトーシス・細胞死などの比較、Fucci・Cell-Clock Cell Cycle Assay Kitなどによる細胞周期のモニタリングも随時施行していく。 上記については、陽子線治療装置の限られた照射時間と使用機会を最大限に利用して進行をはかっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究の残りの実験の大部分を予定している陽子線治療施設では、陽子線治療装置は臨床使用だけでなく他の基礎的検討も多くなされており、限られた照射時間のなかでは実験の進行に限界がある。さらに一昨年度からは慢性的な陽子線治療施設および当大学の人員不足(特に昨年度は研究代表者の業務を主に分担していた同僚が出産休暇・育児休暇を取得したことに伴い研究代表者が他業務にて極めて多忙になっている状態である)による臨床業務の増加と研究時間の制限も重なっており、当該研究も順番を待って実験を施行していく予定となっているが、混雑と時間制限と人員不足のため予定より進行は遅れ、次年度使用額が生じた。令和元年度は陽子線を使用する各種予備実験・関連実験を施行して、spheroid cellの亜致死損傷の回復(SLDR)および潜在致死損傷の回復(PLDR)を評価検討していく。また、生細胞タイムラプスイメージングシステムIncucyteを用いた陽子線照射後とX線照射後のspheroidの経時的変化の観察と比較検討や、γH2AX染色・トリパンブルーアッセイ等を用いたアポトーシス・細胞死などの比較、Fucci・Cell-Clock Cell Cycle Assay Kitなどによる細胞周期のモニタリングも随時施行していく。上記については、陽子線治療装置の限られた照射時間と使用機会を最大限に利用して進行をはかっていく予定である。
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