研究課題
早期肺癌に対する体幹部定位放射線治療は、手術適応外患者に対する標準治療法とされている。手術ハイリスク患者においても同等の生存率が報告されており、今後さらなる適応拡大が期待される。しかし、致死的有害事象が少なからず存在し、その多くは放射線肺臓炎が原因となっている。そのため体幹部定位放射線治療における放射線肺臓炎の予防は重要な課題である。クラリスロマイシンの少量長期療法は、多くの上気道・下気道の慢性炎症病態の治療に用いられており、クラリスロマイシンの放射性肺炎の発症予防効果が期待される。今年度は、クラリスロマイシンの有効性を検証するための後方視的研究を行った。既に体幹部定位放射線治療が行われた患者、約800例を対象とし、放射線肺臓炎の頻度、重症度を後方視的に解析した。クラリスロマイシン服用例と非服用例に分類し、それぞれの放射線肺臓炎を解析し、クラリスロマイシン服用を含む患者因子、治療因子の中から放射線肺臓炎の危険因子を探った結果、有効性が示唆される結果が得られた。間質性肺炎陰影について、画像診断医や呼吸器内科医の助言を受け、再度治療前CTをレビューし、その程度を分類した。特に特発性肺線維症については画像診断基準に則り、抽出した。特発性肺線維症患者に対する体幹部定位放射線治療の安全性について検証した。
2: おおむね順調に進展している
体幹部定位放射線治療が行われた患者、約800例を対象とし、放射線肺臓炎の頻度、重症度を後方視的に解析した。クラリスロマイシン服用例と非服用例に分類し、それぞれの放射線肺臓炎を解析し、クラリスロマイシン服用を含む患者因子、治療因子の中から放射線肺臓炎の危険因子を探った結果、有効性が示唆される結果が得られた。その結果を第30回高精度放射線外部照射部会学術大会にて発表した。同時に英文論文として現在投稿中である。
今後、前向き試験を速やかに開始し、症例の蓄積をはかるために検討中である。後方視的解析より得られた放射線肺臓炎のリスク因子を探り、クラリスロマイシンが放射線肺臓炎の予防薬として有効かを検証する前向き試験の妥当性を検討し、結果を反映したプロトコールを作成する。続けて、後方視的研究結果を学術学会および論文にて公表する。同時に、クラリスロマイシンの有効性を検証するために適正な前向き試験のstudy designを検討する。ランダム化した第3相試験を想定している。適正症例数を計算し、多施設共同試験の参加施設を募集する。倫理上の問題は試験デザインの段階で検討し、東海大学および大船中央病院の倫理委員会の審査を受ける。共同試験の参加施設は自施設の倫理委員会審査後に参加する。研究の公正性、データの取り扱い方法については大学および施設の臨床試験担当部門の検証をうける。また統計解析、臨床試験管理について外部機関に委託を検討する。前向き試験参加施設は厳選し数施設とする。
前年度は、後方視的研究が主体で、既存の資源を活用することにより予定よりも使用金額が少なかった。
前向き試験を行うにあたって、クラリスロマイシンを購入するための薬品代に使用する予定である。
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