研究実績の概要 |
腫瘍が単クローン性に増殖した場合、我々が用いてきた7種類の培養細胞に60Gy/30回/6週の照射を行うと、最も放射線感受性の高いHFLIIIの場合生残率は1.42x10^(-17)%であり、最も放射線抵抗性のSQ20Bの場合7.10x10^(-3)%である。 近年、腫瘍の増殖はビッグバンモデルに従い発生の初期に突然変異を繰り返し遺伝子的にヘテロクローンとなることが分かってきた。そこで、ビッグバンモデルに従い増殖するシミュレーションモデルを作成した。新たなサブクローンに対して、我々が用いてきた7種類の培養細胞の放射線感受性を自動的にランダムに付与するようにした。 前治療無く切除された乳癌組織の単位体積当たりの腫瘍細胞数を測定することを行った。72症例の測定を行い最低値113,321個で最大値1.2x10^6、平均値は457,029個であった。後の研究では1mm^3中の腫瘍細胞数をこの平均値を用いた。腫瘍が球状に増殖したと仮定して、ある大きさに達した時に60Gy/30回/6週を開始してGLQ modelに従って細胞死を遂げた時の局所制御率を5000個の腫瘍で検討した。その結果、腫瘍径が1cm以下、1cm~2cm以下、2cm~3cm以下、3cm~4cm以下、4cm~5cm以下、5cmより大で、各々17.5%, 18.62%, 9.50%, 5.31%, 4.04%, 4.28%と全体に低い局所制御率であった。そこで、1,000個未満になれば局所制御が得られるとして同様の解析を行ったところ、それぞれ66.43%, 67.96%, 63.42%, 43.43%, 32.0%, 26.1%と臨床での局所制御率に近い値が得られた。以上の結果から、放射線治療の局所制御にはTotal Cell Killが必要条件ではない可能性が高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は昨年度病気療養のため、数ヶ月研究のできない期間が生じた。 いくつかの実際の腫瘍細胞の計測と、その結果得られた結果に基づき、シミュレーションモデルを作成して、研究補助者に腫瘍を発生させてもらうことができた。5,000個の腫瘍を発生させて、GLQモデルで線量効果関係を計算させるが、最小値を求めるプルグラムは収束できない場合もあるため、同時に5,000個を発生させることができず、1個ずつ行う作業である。これを3セット、合計15,000個の腫瘍について行ってもらった。 このために人件費の支出と、用いているソフトウエアの定期的なバージョンアップが研究費の主な支出で、病気療養のため予定の学会出張を取りやめたため、次年度の繰越金が発生した。 放射線感受性の異なる腫瘍を用いて同様の検討を行うことで、網羅的に放射線感受性の不均一な腫瘍に対する分割照射の線量効果関係を明らかにすることができると考えて、次年度も研究を行うこととしている。
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