研究課題
今年度は、年度計画に従って性質の異なる細胞にX線や高LET炭素線などを照射前後、異なる酸素濃度環境で細胞を培養し、放射線応答における炭素線と酸素濃度の関係について以下の実験を行った。1.染色体損傷の解析:①マウス腎臓初代培養細胞についてFISH法を用いて染色体異常頻度解析を行い、染色体損傷の評価を行った。②ヒト脳腫瘍細胞について微小核頻度解析により染色体損傷の評価を行った。2.相同組み換え細胞頻度の解析:RaDRマウス腎臓初代培養細胞を用いてX線や高LET炭素線に照射後GFP陽性細胞頻度として相同組み換え頻度を解析した。3.Nrf2タンパクの発現:RaDRマウス腎臓初代培養細胞を、放射線照射後異なる酸素濃度環境で培養し24時間後のNrf2のタンパク質発現をウェスタン法にて解析した。結果1:マウス腎臓初代培養細胞およびヒト脳腫瘍細胞株では、放射線照射後の培養における酸素濃度の違いによって染色体損傷が異なることが明らかになった。具体的にはマウス腎臓初代培養細胞についてX線或いは高LET炭素線照射後、低酸素環境(1%、3%)で培養した細胞は常酸素(21%)で培養した細胞と比べて染色体異常頻度が低い(染色体異常細胞数、染色体交換、断片)。ヒト脳腫瘍細胞株について、照射後3%の酸素濃度で培養した細胞は1%、21%の酸素濃度で培養した細胞と比べて微小核頻度が低い。2:RaDRマウス腎臓初代培養細胞を用いて放射線照射後、異なる酸素濃度環境で一週間培養し相同組み換え頻度について、3%の酸素環境で培養した細胞の相同組み換え頻度は放射線照射後に高くなる。だが、1%の酸素環境で培養した細胞の相同組み換え頻度は照射の有無に関わらず3%、21%酸素濃度環境より低い。3.マウス腎臓初代培養細胞は放射線照射後、異なる酸素環境で24時間培養した細胞のNfr2のタンパク質発現については差が認められなかった。
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