研究課題/領域番号 |
16K10412
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
秋元 哲夫 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 分野長 (10261851)
|
研究分担者 |
茂木 厚 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (10433997)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 陽子線治療 / 放射線感受性 / 細胞応答 / DNA損傷修復 / LET / RBE |
研究実績の概要 |
陽子線治療は先進医療として種々の限局性固形癌に対する根治療法として、陽子線治療単独または化学療法併用で実施されている。しかし、陽子線に対する細胞応答はX線のように必ずしも十分には明確になっていない。陽子線の線量集中性の基礎となるブラックピーク、特に拡大ブラッグピーク (SOBP) の位置(中央と停止直前など)により生物効果の違いも指摘されており、陽子線照射の空間的位置の相違よる生物学的効果比 (RBE)の検証は重要である。そこで本研究の目的は、陽子線照射に対するがん細胞および正常細胞応答に関して、陽子線の照射法や3次元的な空間的位置特性の影響、併用薬剤による増感効果に伴う細胞応答の修飾などを解析して、得られた生物学的特性を臨床へフィードバックし、陽子線の物理学的な特性に依存している治療計画法や線量分割、併用療法などを、陽子線の生物学的特性を加味した治療法開発に発展させて集学的治療における陽子線治療の有効性確立の基礎とするものである。研究初年度は、陽子線に対する細胞応答の検討を中心に実施し、1)ブロードビームを用いたSOBPの近位、中央、遠位などの空間的位置によるLETならびにRBEの相違があること、2)その背景にLETの違いによるDNA損傷とその修復プロセスが関与している、という知見を放射線感受性が異なる食道癌培養細胞株を用いた実験で得ている。研究成果は学会発表をし、その内容を論文化し投稿中である。並行して、薬剤併用による陽子線照射の増感作用とその機序について、上記のSOBPの位置により相違があるかどうか、またその増感機序がX線による増感効果と相違があるかについて研究を進めている段階である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度は、放射線感受性の異なる培養細胞(ヒト食道癌扁平上皮癌細胞)を用いて、それぞれのX線および陽子線に対する放射線感受性(細胞生残率、RBE評価、など)を評価し、陽子線に対する細胞応答の検討を中心に実施し、1)ブロードビームを用いたSOBPの近位、中央、遠位などの空間的位置によるRBEの相違の有無を、X線との比較の観点から評価し、2)その背景にある細胞応答の機序の相違について、細胞生残率に加えて放射線の細胞応答に重要な増殖能、DNA損傷とその修復機構やアポトーシス誘導機構の関連分子や遺伝子の活性化などを、ウエスタンブロットや遺伝子発現解析などの分子生物学的な手法を用いて解析をした。その結果、LETの違いによるDNA損傷とその修復プロセス、特にDNA2重鎖切断の修復過程が関与している、という知見を放射線感受性が異なる食道癌培養細胞株を用いた実験で得ている。研究成果は学会発表をし、その内容を論文化し投稿中である。並行して、薬剤併用による陽子線照射の増感作用とその機序について、上記の陽子線治療単独の照射実験と同じ手法を用いてSOBPの位置により相違があるかどうか、またその増感機序がX線による増感効果と相違があるかについて研究を進めている段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進およびタイムライン管理については、当初の研究計画を常に確認しつつ、研究手法や手技に問題があれば随時修正し、結果を正確にかつ適切に得られるように研究者間で相互に確認しながら進めることを考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究初初年度の進捗の若干の遅れがあり、当初の予定で購入予定であった消耗品や備品が次年度に持ち越しとなったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究期間2年目には初年度で進捗が遅れがあった実施項目を適切にかつ迅速に実施する。
|