研究課題/領域番号 |
16K10416
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
後藤 了一 北海道大学, 大学病院, 助教 (10645287)
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研究分担者 |
山下 健一郎 北海道大学, 医学研究院, 特任教授 (00399940) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒト化マウス / 抗HLA抗体 / 皮膚移植モデル |
研究実績の概要 |
平成29年度はNSGマウスと異なる免疫不全マウスであるBALB/c IL2Rg -/- Rag -/- マウスを輸入し、我々の施設で繁殖した。このマウスは研究代表者が留学先でヒト化マウス血管移植モデルを確立したものと同種である。まずこのマウスをレシピエントとした時のアロ系統マウス移植モデルが確立できるのか確認した。アロ系統であるC57BL6マウス(H2kb)の心グラフトをBALB/c IL2Rg -/- Rag-/-マウス(H2kd, 129)の腹腔内に異所性移植したところ、拒絶反応は観察されず全例(n=3)生着した。則ち免疫不全マウスに見られる自然免疫系による反応での拒絶反応は観察されなかった。移植モデルへの使用が可能であることを確認した後、まずはヒト組織に対する反応を観察することした。平成28年度の成果でNSG マウス(BALB/c IL2Rg -/- Rag-/-マウスより自然免疫の関与が強いと考えられる免疫不全マウス)においてヒト血管グラフトは血栓形成をきたすことを報告したが、これが自然免疫による炎症反応の結果なのか、移植手技の問題であるのか判定が困難であった。そこで手技的にはより簡便で確立されている皮膚移植を用いて検討することとした。ヒト皮膚は形成外科との共同研究とし、デルマトームで皮膚移植用に採取した組織のうち余剰分がでた場合に提供頂く計画を立案した。ヒト組織を使用する臨床研究となるため北海道大学病院が定めるIRBにて承認を取得し、現在組織採取の同意が得られる症例選択を行なっている。一方、肝移植後のHLA class II抗体検出症例から同意を得て、抗体量をLabscreen single antigen test で測定し、抗体を含む血清を-80 度に保存した。同意を得た症例は14例、延べ28回であり、計画通り必要な抗体量の採取、保存が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血管移植モデルの作成でおそらくNSGマウスの自然免疫の問題と考えられる血栓閉塞からモデル確立に難渋し、新しく導入したBALB/c IL2Rg -/- Rag -/- マウスでは異種であるヒトへの自然免疫反応を考慮し、簡便な皮膚移植からスタートすることとした。その場合診療科をまたいだ共同研究となるため研究推進に時間を要している。患者血清からの抗体採取は順調に進んでおり、研究に使用する十分量の血清が保存できていると考えている。これらの状況を総括してやや遅れていると考えているが、皮膚移植は一度に多くの移植を施行可能なモデルであり、この実施により研究は飛躍的に推進すると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト皮膚移植モデルは採取された皮膚の余剰分の面積に依存するが、一度に10-20程度の移植が可能である。まずNSGマウスとBALB/c IL2Rg -/- Rag -/- マウスに移植した時の異種の反応の違い、また冷阻血時間での違いを観察する。これらの免疫不全マウスにおいてヒト免疫の構築や抗体の投与を施行しない場合にあらゆる条件で拒絶反応が観察されないことを確定し、貯蓄している血清(抗体)をSingle beads法でのMFI(蛍光強度)を根拠に濃度調整して1週間毎に経静脈投与し、抗体関連の拒絶反応を観察する。拒絶反応が観察されればその機序解析、また治療法として細胞治療の可能性を探索する。
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